「フリーランスエンジニアは自由で高収入」という華やかなイメージの裏で、「稼げないからやめとけ」という厳しい声も聞こえてきます。
独立を考えている方や、現在思うように稼げていない方にとって、この言葉は大きな不安の種でしょう。
しかし、断言します。
「フリーランスエンジニアだから稼げない」のではありません。
「稼げない働き方をしている」から稼げないのです。
この記事では、「稼げない」と言われる理由を徹底分析し、稼げない人に共通する特徴を明らかにします。
その上で、未経験からでも高年収を目指せる「稼げるフリーランスになるための具体的なロードマップ」について解説していきますので、是非参考にしてください。
【本記事の信頼性】
- 執筆者は元エンジニア
- 大手プログラミングスクールのWebディレクター兼ライターを経験
- 自らも地元密着型のプログラミングスクールを運営
「フリーランスエンジニアは稼げない」と言われる5つの理由
なぜ、フリーランスエンジニアは「稼げない」というイメージを持たれがちなのでしょうか。
まずは、そのように言われる背景にある理由を5つ解説します。
収入の保証がなく不安定
会社員とフリーランスの最も大きな違いは、収入の安定性です。
会社員であれば、毎月決まった日に固定給が支払われますが、フリーランスにはその保証がありません。
案件が獲得できなければ収入はゼロになりますし、クライアントの都合で契約が突然終了するリスクも常に存在します。
特に独立したての頃は実績が少ないため、継続的に案件を獲得するのが難しく、収入が不安定になりがちです。
この「収入が途絶えるかもしれない」という不安感が、「稼げない」というイメージに直結している最大の理由といえるでしょう。
自分で営業・交渉する必要がある
会社にいれば、営業担当が仕事を取ってきてくれますが、フリーランスは技術的な業務に加えて、自分自身で案件を探し、クライアントと条件を交渉するという営業活動も行わなければなりません。
高い技術力を持っていても、それをアピールする営業力がなければ仕事は獲得できないのです。
また、報酬の単価交渉を自分で行う必要があり、交渉が苦手だと自分のスキルを安売りしてしまうことになります。
この「営業」という、エンジニアリングとは全く異なるスキルが求められる点が、多くのエンジニアにとって高いハードルとなっています。
税金や保険などの事務作業が発生する
フリーランスになると、会社が代行してくれていた税金や社会保険の手続きを、すべて自分で行う必要があります。
具体的には、国民健康保険や国民年金への加入手続き、そして年に一度の確定申告などが挙げられます。
日々の業務で発生する経費の管理や請求書の発行といった経理作業も、もちろん自分で行わなければなりません。
事務作業は、直接収益を生むわけではありませんが、事業を継続する上で不可欠な業務です。
こういった事務作業に時間を取られ、本業に集中できなくなってしまう点も、「稼げない」と感じる一因かもしれません。
スキルが陳腐化すると仕事がなくなる
IT業界の技術進歩は非常に速く、今日主流の技術が数年後には時代遅れになっていることも珍しくありません。
会社員であれば、研修制度などを通じて新しいスキルを学ぶ機会がありますが、フリーランスは自ら積極的に情報を収集し、自己投資してスキルをアップデートし続ける必要があります。
この学習を怠ると、自分のスキルセットが市場の需要と合わなくなり、徐々に案件を獲得できなくなってしまいます。
常に学び続けるという強い意志と自己管理能力がなければ、長期的に稼ぎ続けることは難しいでしょう。
会社員という後ろ盾がない
フリーランスは、文字通り「個人の信用」だけで仕事をしています。
会社という組織の後ろ盾がないため、社会的な信用度が低く見られがちな側面があります。
そのため、簡単に仕事が取れないというリスクが生まれてしまうのです。
また、クライアントとの間でトラブルが発生した場合も、法務部のような守ってくれる組織はありません。
契約書の締結からトラブル対応まで、すべて自己責任で行う必要があります。
この孤独感と責任の重さも、フリーランスの厳しさの一つです。
稼げないフリーランスエンジニアに共通する7つの特徴
「フリーランスエンジニアが稼げない理由」はいろいろありますが、特に重要なのは「自分自身のスキルや行動」です。
ここでは、残念ながら稼げずに苦労しているフリーランスエンジニアに共通する特徴を7つ紹介します。
もし当てはまる項目があれば、今すぐ改善が必要です。
技術が不足している
フリーランス市場で求められるのは、教育を必要としない「即戦力」としてのスキルです。
実務経験が1〜2年程度と浅かったり、特定の分野の専門性が低かったりすると、高単価な案件を獲得することは非常に困難です。
特に、誰でもできるような簡単な修正作業やテスト業務ばかりでは、単価は頭打ちになってしまいます。
市場で需要の高い技術(例:クラウド、AI、セキュリティ)や、複数の技術を組み合わせられる応用力がなければ、稼げるエンジニアの仲間入りはできません。
営業力や交渉力が皆無
「自分は技術者だから、営業は苦手」と考えている人は、フリーランスとして稼ぐのは難しいでしょう。
前述の通り、フリーランスは自分という商品を売り込む営業担当でもあります。
自分のスキルや実績を言語化して相手に伝え、自身の市場価値に見合った報酬を交渉する能力は、技術力と同じくらい重要です。
このスキルがないと、買い手市場であるクラウドソーシングサイトやエージェントサービスなどで、相場より著しく低い単価で買い叩かれてしまうことになります。
自己管理能力が低い(時間・体調・金銭)
フリーランスは、すべてを自分で管理しなければなりません。
時間管理 | 始業・終業時間も休日も自由なため、怠惰になりやすい。納期から逆算したスケジュール管理ができないと、信頼を失う。 |
体調管理 | 体調を崩して働けなくなれば、収入は即座にゼロになる。会社員のような有給休暇や傷病手当金はない。 |
金銭管理 | 毎月の収入が変動するため、計画的な収支管理が必須。税金の支払いのために、売上の一部を計画的に貯蓄する必要がある。 |
これらの自己管理ができない人は、安定して稼ぎ続けることはできません。
低単価な案件ばかり受注してしまう
独立したての頃は、「まずは実績を」と焦るあまり、単価が低い案件でも安易に引き受けてしまいがちです。
しかし、これが常態化すると「低単価スパイラル」に陥ってしまいます。
低単価な案件は、高度なスキルが求められない代わりに、作業量やコミュニケーションコストが多い傾向にあります。
そのため、常に忙しいにもかかわらず収入は増えず、スキルアップのための学習時間も確保できない、という悪循環に陥るのです。
勇気を持って、自分の価値に見合わない仕事を断る判断力も必要です。
コミュニケーション能力が低い
フリーランスの仕事は、一人で黙々とコードを書くだけではありません。
クライアントの要望を正確にヒアリングしたり、技術的な内容をわかりやすく説明したり、定期的な進捗報告を行ったりと、円滑なコミュニケーションが不可欠です。
報連相を怠ったり、専門用語ばかりで相手に意図が伝わらなかったりすると、手戻りが発生して無駄な工数がかかるだけでなく、最悪の場合は契約を打ち切られることもあります。
高い技術力も、円滑なコミュニケーションがあって初めて価値を発揮するのです。
アウトプット(ポートフォリオ)がない
自分のスキルを証明できるものがないと、クライアントはあなたに仕事を依頼する判断ができません。
その証明となるのが、過去の実績をまとめたポートフォリオです。
「どんな技術を使って、どんな課題を解決し、どんなものを作ってきたのか」が一目でわかるポートフォリオがあれば、営業の際に非常に強力な武器となります。
これがないと、口頭でスキルを説明するしかなく、説得力に欠けてしまいます。
日頃からGitHubでコードを公開したり、技術ブログを執筆したりといったアウトプットを心がけましょう。
フリーランスエージェントをうまく活用できていない
営業が苦手なエンジニアにとって、フリーランスエージェントは非常に強力な味方です。
しかし、フリーランスエージェントの便利さを知らなかったり、利用をためらったりしている人が少なくありません。
エージェントは、ユーザーのスキルや希望に合った案件を紹介してくれるだけでなく、面倒な単価交渉や契約手続きを代行してくれます。
そのため、自分で営業するよりも高単価な非公開案件を紹介してもらえることも多いです。
エージェントをうまく活用できていない人は、本来得られるはずの収入や機会を大きく損失している可能性があります。
フリーランスエージェント最大手の「レバテックフリーランス」などを活用することで、収入を大幅に増やすこともできるでしょう。
「稼げる」フリーランスエンジニアになるためのロードマップ
では、どうすれば「稼げる」フリーランスエンジニアになれるのでしょうか。
ここでは、フリーランスエンジニアとして着実にステップアップするための具体的なロードマップを7段階で紹介します。
STEP1:会社員として3年以上の実務経験を積む
まず最も重要なのが、土台となる実務経験です。
いきなりフリーランスになるのではなく、必ず一度は会社員として働き、3年以上の実務経験を積むことを強く推奨します。
この期間に、プログラミングスキルはもちろんのこと、チームでの開発手法、プロジェクト管理、ビジネスコミュニケーションといった、現場でしか学べないスキルを吸収してください。
この3年間が、自身のフリーランスとしてのキャリアの基盤となります。
STEP2:市場価値の高い専門スキルを身につける
3年以上の実務経験の中で、自分の専門分野を定め、その中でも特に市場価値の高いスキルを磨きましょう。
特に、以下のようなスキルを持つエンジニアは高単価な案件を獲得しやすい傾向にあります。
- クラウド(AWS、Azure、GCP)の設計・構築スキル
- AI・機械学習関連の開発スキル
- GoやRustといったモダンなプログラミング言語
- セキュリティに関する深い知識
複数のスキルを掛け合わせられると、さらに市場価値は高まります。
STEP3:実績を証明するポートフォリオを作成する
会社員として働いているうちから、自分の実績を証明するためのポートフォリオを準備し始めましょう。
守秘義務に触れない範囲で、自分が関わったプロジェクトの概要や、そこで果たした役割、使用した技術などをまとめます。
それに加えて、GitHubで個人開発のソースコードを公開したり、QiitaやZennで技術記事を投稿したりするのも非常に有効です。
これらのアウトプットが、あなたのスキルレベルを客観的に証明してくれます。
STEP4:複数の案件獲得手段を確保する
独立後の収入を安定させるためには、案件を獲得するための手段を複数持っておくことが重要です。
例えば、以下のような手段が代表的です。
フリーランスエージェント | 最も安定的。高単価案件が多く、営業を代行してくれる。複数登録が基本。 |
知人からの紹介(リファラル) | 信頼関係があるため、契約に繋がりやすい。単価交渉もしやすい。 |
SNS(Xなど) | 技術発信を通じて、企業から直接声がかかることがある。セルフブランディングが重要。 |
クラウドソーシング | 実績作りのためには良いが、単価が低い傾向にあるため、メインにするのは避けるべき。 |
最低でもエージェント2〜3社と、もう一つの案件獲得手段を確保した状態で独立するのが理想です。
STEP5:単価交渉と契約の知識を学ぶ
自分の価値を正しく評価してもらい、適正な報酬を得るためには、単価交渉のスキルが不可欠です。
自分のスキルセットの市場相場を常に把握し、交渉の際には「なぜ自分はその金額に見合うのか」を論理的に説明できるように準備しておきましょう。
また、契約書の内容を正しく理解し、不利な条件(偽装請負や過度な責任範囲など)がないかを確認する知識も、自分の身を守るために必須です。
STEP6:徹底した自己管理術を身につける
フリーランスとして長期的に成功するためには、プロフェッショナルとしての自己管理が欠かせません。
ポモドーロ・テクニックなどの時間管理術を取り入れたり、定期的な運動や十分な睡眠で健康を維持したり、収入の2〜3割は税金や将来のために貯蓄に回すといった金銭管理を徹底したりと、自分を律する仕組みを作り上げてください。
自己管理こそが、フリーランスの生産性と安定性を支える土台となります。
STEP7:継続的に学習しスキルをアップデートする
最後に、常に学び続ける姿勢を持ちましょう。
IT業界の変化の波に乗り遅れないよう、技術系のニュースサイトを毎日チェックしたり、オンライン学習プラットフォームを活用したり、勉強会に参加したりと、インプットとアウトプットを習慣化することが重要です。
この継続的な努力が、5年後、10年後も市場から求められるエンジニアであり続けるための唯一の方法です。
フリーランスエンジニアのリアルな年収事情
「稼げる」「稼げない」という議論は、具体的な数値がなければイメージが湧きにくいでしょう。
この項目では、フリーランスエンジニアのリアルな年収に関するデータを紹介します。
フリーランスエンジニアの平均年収
各種媒体の調査によると、フリーランスエージェントの平均年収は650万円~750万円がボリュームゾーンとなっています。
しかし、これはあくまで平均であり、スキルや経験のあるフリーランスエージェントならば、年収1000万円を超えている人も少なくありません。
ただし、逆もしかりで、スキル不足のフリーランスエンジニアは年収300万円にも届かないというケースもあります。
結局はスキル次第となるため、平均年収については目安程度に捉えておくべきでしょう。
年収1000万円以上を稼ぐエンジニアの割合
こちらも各種調査を徹底的に調べた結果、調査媒体によって多少の差があるものの、フリーランスエンジニアで年収1000万円を超えている割合は概ね5%~10%でした。
基本的に1割に満たない割合ということになります。
それだけ、「普通のことをしていては届かない年収」ということでしょう。
年収1000万円を超えるようなフリーランスエンジニアは、ほとんどの場合、先ほど解説した「稼げるフリーランスエンジニアになるためのロードマップ」の項目に記載したことをすべて実践している人たちです。
高い年収を目指す場合は、是非とも前述の内容を踏まえ、市場価値の高いスキルを身につけ、適切な営業活動を行ってください。
「フリーランスエンジニアでは稼げない」と不安な人が知っておくべきこと
これまで解説してきたようなロードマップやデータを見ても、独立への不安が完全には拭えないかもしれません。
最後に、そんな方に向けて、心を少し軽くするための考え方を2つお伝えします。
最初は稼げなくて当たり前と心得る
独立して最初の数ヶ月は、思うように案件が取れず、収入が安定しない時期があるかもしれません。
しかし、それは多くのフリーランスが通る道です。
大切なのは、その期間に焦って低単価案件に飛びつかないことです。
独立前に、最低でも半年分の生活費を貯金しておくことで、心に余裕を持って営業活動に専念できます。
「最初の半年は助走期間」と割り切り、長期的な視点でキャリアを構築していくことが成功の鍵です。
会社員に戻るという選択肢も常にある
フリーランスという働き方が、すべての人に合うわけではありません。
もし挑戦してみて「自分には合わない」と感じたなら、いつでも会社員に戻るという選択肢があります。
一度フリーランスを経験したエンジニアは、自己管理能力や問題解決能力が高いと評価され、転職市場で有利に働くことさえあります。
フリーランスへの挑戦は、決して後戻りできない片道切符ではないのです。
「ダメなら戻ればいい」と考えるだけで、独立への心理的なハードルはぐっと下がるはずです。
まとめ
以上、「フリーランスエンジニアは稼げない」という言葉の裏にある理由から、稼げない人の特徴、そして稼げるエンジニアになるための具体的なロードマップまでを詳しく解説しました。
フリーランスとして成功するかどうかは、結局のところ自分次第です。
技術力、営業力、自己管理能力をバランス良く高め、市場の変化に柔軟に対応し続けることができれば、会社員時代には考えられなかった高い収入と自由な働き方を手に入れることが可能です。