エンジニア組織の拡大に伴い、近年日本のIT企業でも導入が進んでいる「VPoE(Vice President of Engineering)」という役職。
「具体的に何をする人?」
VPoEという役職に対して、このような疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、VPoEの定義や生まれた背景から、CTO・テックリード・エンジニアリングマネージャー(EM)との明確な役割の違い、具体的な仕事内容、そして市場価値が高まるVPoEになるために必要なスキルまでを徹底解説します。
将来的にマネジメントや組織づくりに携わりたいエンジニアの方は、是非参考にしてください。

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VPoEとはどんな役職か?

VPoEは「Vice President of Engineering」の略称であり、日本語では「技術担当副社長」や「エンジニアリング部門の責任者」と訳されることが多いです。
近年、IT企業やスタートアップを中心に導入が進んでいるこの役職は、企業の成長において非常に重要な役割を担っています。
ここでは、VPoEが具体的にどのような責任を持つポジションなのか、そしてなぜ多くの企業で必要とされるようになったのかについて、その定義と背景を詳しく解説していきます。
VPoEはエンジニア組織のマネジメント責任者
VPoEは、一言で表現するならば「エンジニア組織のマネジメントにおける最高責任者」です。
技術的な意思決定よりも、エンジニアたちが最大限のパフォーマンスを発揮できるような組織作りや、働く環境の整備に主眼を置いています。
開発チームが直面する人間関係の課題やキャリアパスの悩みなどに寄り添い、組織全体の生産性を向上させることが最大のミッションといえるでしょう。
また、経営層と現場のエンジニアをつなぐ架け橋としての役割も果たします。
経営目標を開発現場に浸透させると同時に、現場の声を経営に反映させるためのコミュニケーション能力が求められるポジションです。
VPoEという役職が生まれた背景
かつて日本のIT企業の多くでは、CTO(最高技術責任者)が技術選定から組織マネジメント、採用までを一手に引き受けていました。
しかし、Webサービスの多機能化や技術の複雑化、さらにエンジニア不足による採用競争の激化に伴い、CTO一人ですべての領域をカバーすることが困難になってきました。
技術面はCTOが、組織面はVPoEが担当するという「役割の分離」を行うことで、それぞれの領域において質の高い意思決定と実行が可能になります。
アメリカのシリコンバレーなどのテック企業では一般的なこの体制は、2010年代後半から日本国内でも急速に普及し始めました。
現在では、エンジニアが数十名を超える規模の組織において、VPoEの設置はスタンダードな選択肢となっています。
VPoEの仕事内容や役割

VPoEの仕事は多岐にわたりますが、すべての活動は「エンジニア組織を成功に導くこと」に集約されます。
コードを書くこと自体は主業務ではなく、コードを書く人たちが働きやすい環境を作ることが仕事です。
ここでは、VPoEが担うべき主要な3つの役割である「組織マネジメント」「採用戦略」「成長支援」について、それぞれの具体的な業務内容を掘り下げていきます。
組織マネジメント(チーム作り)
組織マネジメントは、VPoEにとって最も根幹となる業務です。
個々のエンジニアが高い技術を持っていても、チームとしての連携が取れていなければ、プロダクト開発は円滑に進みません。
心理的安全性が高く、活発な議論が行われるチーム文化を醸成することが求められます。
具体的には、以下のような業務を行います。
- 開発プロセスの改善
- チーム間の対立解消
- リモートワーク環境下でのコミュニケーション設計
現在では、オフィスワークとリモートワークを併用するハイブリッドな環境での組織運営が一般的であるため、オンライン・オフラインを問わず、組織の一体感を保つ手腕が問われるでしょう。
また、エンジニアが開発に集中できる環境を整えるために、不要な会議の削減やツールの導入決裁を行うこともあります。
組織のボトルネックを特定し、それを取り除くことで開発スピードを最大化させるのです。
必要な人材を獲得するための戦略全般
優秀なエンジニアの採用は、企業の競争力を左右する極めて重要な課題です。
単に求人票を出すだけでなく、自社の技術的な魅力を外部に発信する「技術広報」としての活動も重要です。
テックブログの運営を推進したり、技術イベントへの登壇を奨励したりすることで、エンジニアにとって魅力的な企業ブランディングを確立しなければなりません。
さらに、書類選考や面接のプロセスに入り、候補者の技術力だけでなく、自社のカルチャーにマッチするかどうかを見極めます。
入社後のオンボーディングプロセスの設計も行い、新入社員が早期に活躍できる仕組みを整えることも忘れてはならない業務です。
チーム内のエンジニアの成長支援
採用したエンジニアが長く活躍し続けるためには、個々のキャリア形成を支援する仕組みが不可欠です。
そのために、定期的な1on1ミーティングを通じて、メンバーの悩みを聞き出し、キャリアパスの相談に乗ることも日常的な業務の一つです。
「技術を極めたいスペシャリスト志向」なのか、「マネジメントに進みたい志向」なのかを見極め、適切な目標設定とフィードバックを行います。
また、エンジニアが成長を感じられない組織では、離職率が高まるリスクがあります。
そのため、書籍購入補助やカンファレンス参加費用の負担、社内勉強会の開催など、学習機会を提供する制度設計もVPoEの大切な役割といえるでしょう。
VPoEとCTOの違い

「VPoEとCTOはどう違うのか?」という疑問は、役割分担を検討する際によく挙がります。
両者ともエンジニア組織のトップ層に位置する役職ですが、その視点と責任範囲には明確な違いがあります。
最大の違いは、CTOが「技術」に向き合うのに対し、VPoEは「人・組織」に向き合う点です。
以下の表に主な違いをまとめました。
| CTO | VPoE | |
| 主な関心事 | 技術戦略、技術的負債、アーキテクチャ | 組織づくり、採用、評価、育成 |
| 視点 | 「どのような技術で解決するか」 | 「誰がどのように開発するか」 |
| 責任範囲 | 技術的な最終意思決定、品質担保 | 組織の生産性最大化、離職防止 |
| 対外活動 | 技術ブランディング、技術カンファレンス | 採用広報、採用イベント |
CTOは「技術的な正しさ」や「未来の技術投資」を追求し、プロダクトが技術的に競争力を持つことに責任を持ちます。
一方、VPoEは「組織の健全性」や「エンジニアの幸福度」を追求し、持続可能な開発体制を構築することに責任を持つのです。
もちろん、初期のスタートアップなどではVPoEとCTOを兼務する場合もありますが、組織が拡大するにつれて、この2つの役割は明確に分離されるべきでしょう。
両者が対等な立場で連携し、技術と組織の両輪を回すことが、理想的なエンジニア組織の姿です。
VPoEとテックリードの違い

VPoEとテックリードの違いは、責任を持つ範囲の「広さ」と「種類」にあります。
VPoEが組織全体のマネジメントを統括する経営幹部クラスの役職であるのに対し、テックリードは特定のプロジェクトやチームにおける技術的なリーダーです。
テックリードの主な役割は、現場でのコードレビュー、設計方針の策定、技術的な難題の解決など、プレイングマネージャーとしての色彩が強いものです。
チームメンバーが技術的に迷った際の相談役となり、実装レベルでの意思決定を行います。
基本的には、テックリードは「コードを書くこと」が業務の大きな割合を占めます。
VPoE自身がコードを書く機会は少なく、採用や組織課題の解決に時間を使います。
指揮命令系統としては、テックリードの上長がエンジニアリングマネージャー、さらにその上長がVPoEとなるケースが多く見られます。
VPoEとエンジニアリングマネージャーの違い

VPoEとエンジニアリングマネージャー(EM)は、どちらも「人」と「組織」に関わるため混同されやすいですが、大きな違いは「管轄する範囲の規模」と「経営への関与度」です。
エンジニアリングマネージャーは、通常5〜10名程度の特定のチームを担当し、そのチーム内のピープルマネジメントを行います。
メンバー個人の目標管理や1on1、チーム内のリソース調整が主な業務であり、現場に近い距離でマネジメントを実行します。
複数のEMを束ね、部門全体(数十名〜数百名規模)の人事戦略や組織設計を行います。
個別のチームで解決できない組織間の調整や、経営方針に基づいた採用計画の策定など、より経営に近い立場での判断が求められます。
つまり、EMが「戦術レベル」でのチーム運営を行うのに対し、VPoEは「戦略レベル」での組織統括を行う役職と考えるとわかりやすいでしょう。
VPoEに求められるスキル

VPoEは技術職のキャリアパスの一つですが、単にプログラミングが優れているだけでは務まりません。
エンジニアとしてのバックグラウンドを持ちつつ、ビジネスパーソンとしての高度なヒューマンスキルが不可欠です。
ここでは、VPoEとして成功するために特に重要となる3つのスキルセットについて解説します。
高いマネジメントスキル
VPoEにとって最も重要なのは、多様な価値観を持つエンジニアたちをまとめ上げるマネジメント能力です。
エンジニアは技術へのこだわりが強く、時には意見が対立することもあります。
そうした場面で、双方の意見を尊重しながら最適解へと導く調整力が求められます。
また、メンバーの心理的変化を察知する共感力も欠かせません。
モチベーションが低下しているメンバーや、将来に不安を抱えているメンバーに対し、適切なコーチングやメンタリングを行うことで、組織の離職率を低く抑える必要があります。
さらに、問題が発生した際に感情的にならず、事実に基づいて冷静に対処する姿勢も重要です。
組織のトップとして、メンバーが安心して働ける心理的安全性を担保するための振る舞いが期待されます。
組織設計力や採用力
事業のフェーズに合わせて、最適な組織構造を設計するスキルも必要です。
「どのチームにリソースを配分すべきか」
こういった判断は、開発効率に直結します。
時には、アジャイル開発に適した柔軟な組織作りや、グローバルチームとの連携なども視野に入れた設計が求められることもあります。
採用力に関しては、自社の魅力を言語化し、候補者に伝えるプレゼンテーション能力が問われます。
エンジニア市場のトレンドを把握し、ターゲットとなる層に響くメッセージを発信するマーケティング的な視点も必要になるでしょう。
優秀な人材を見抜く選考眼はもちろんのこと、候補者のキャリアプランと自社の方向性を照らし合わせ、双方が幸せになれるマッチングを実現する力が不可欠です。
エンジニアリングへの深い理解
マネジメント職とはいえ、VPoEにはエンジニアとしての確かな経験と理解が必要です。
現場のエンジニアが抱える技術的な課題や、開発プロセスの苦労を肌感覚で理解していなければ、適切な信頼関係を築くことはできません。
「技術の詳細はわからないが、とりあえず早く作ってほしい」といった指示を出すマネージャーは、エンジニアからの信頼を失います。
また、技術的な負債の解消や、新しいツールの導入コストなど、エンジニアリング特有の事情を理解した上で、経営層に対して説明責任を果たす必要もあります。
必ずしも最新技術のコードが書ける必要はありませんが、アーキテクチャの概要を理解し、技術的な議論の内容を把握できるレベルのリテラシーは必須です。
エンジニアたちに対して「この人は自分たちの仕事を理解してくれている」と思わせることが、リーダーシップの基盤となるのです。
VPoEを目指すには何をすればよいか?

将来的にVPoEを目指すのであれば、まずはエンジニアとしての実務経験を積み、技術への理解を深めることがスタートラインです。
その上で、テックリードやエンジニアリングマネージャー(EM)といったリーダー職を経験し、ピープルマネジメントの実績を作ることが近道となります。
特にEMの経験は重要です。
また、小さなチームだけでなく、複数のチームを横断して見る経験や、プロジェクトマネジメントの経験もVPoEの業務に直結します。
さらに、経営視点を養うために、事業計画や財務に関する知識を学ぶことも有効です。
エンジニアリングとビジネスをつなぐ翻訳者としての能力を高めることで、経営層から信頼されるVPoEへと近づくことができるでしょう。
VPoEの将来性

DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展により、あらゆる産業でソフトウェア開発の重要性が高まっています。
それに伴い、エンジニア組織の拡大・強化は多くの企業にとって最重要課題となっており、VPoEの需要は今後も拡大し続けると予測されます。
組織文化を醸成し、魅力的な開発環境を作るVPoEの存在は、企業の存続に関わるほどの価値を持つようになりました。
また、VPoEのキャリアパスも多様化しています。
VPoEを経験した後に、CHRO(最高人事責任者)やCOO(最高執行責任者)、あるいは自身で起業してCEOになるケースも見られます。
技術と人と経営のすべてに関わるVPoEは、非常に市場価値の高いポジションであり、その将来性は極めて明るいといえるでしょう。
まとめ
VPoEは、エンジニア組織のマネジメントを専門とする責任者であり、技術戦略を担うCTOとは明確に異なる役割を持っています。
採用、組織作り、評価、育成など「人」と「組織」に責任を持つ。
技術選定、アーキテクチャ、技術戦略など「技術」に責任を持つ。
エンジニアが働きやすい環境を整え、組織のパフォーマンスを最大化させるVPoEは、現代のソフトウェア開発において不可欠な存在です。
組織課題に興味があり、エンジニアたちの成長を支えることに喜びを感じる方は、是非VPoEというキャリアを目指してみてはいかがでしょうか。

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