IT業界でキャリアアップを目指す方なら一度は耳にするであろう「プロジェクトマネージャ試験」。
しかし、インターネット上では「取得しても意味ない」という声がある一方で、「難易度が高くてすごい」という評価も存在します。
一体どちらが本当なのでしょうか。
そこでこの記事では、現在のIT業界の実情を踏まえ、プロジェクトマネージャ試験の概要から、なぜ「意味ない」と言われるのか、そして本当に取得する価値があるのか、といったことについて多角的に解説していきます。
【本記事の信頼性】
- 執筆者は元エンジニア
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プロジェクトマネージャ試験とは
プロジェクトマネージャ試験は、情報処理推進機構(IPA)が主催する国家試験「情報処理技術者試験」の中でも、特に高度な知識・技能が問われる「高度情報技術者試験」の一つです。
まずは、その試験の基本的な情報から見ていきましょう。
試験の概要
プロジェクトマネージャ試験は、ITプロジェクトを成功に導く責任者としての能力を認定するための試験です。
ITスキル標準(ITSS)では、最高レベルの「4」に位置づけられており、その難易度は非常に高いことで知られています。
試験は年に一度、秋期(10月)に実施されるのが通例です。
試験形式は、多肢選択式の午前Ⅰ・午前Ⅱ試験、記述式の午後Ⅰ試験、そして論述式の午後Ⅱ試験の4部構成となっています。
近年の合格率は15%前後で推移しており、誰でも簡単に合格できる資格ではないことがわかります。
出題範囲
試験では、プロジェクトマネジメントに関する広範な知識が問われます。
具体的には、プロジェクトの立ち上げから計画、実行、管理、そして終結に至るまでの一連のプロセスを適切に遂行する能力が試される内容です。
特に、午後Ⅱの論述式試験がこの試験の大きな特徴と言えるでしょう。
ここでは、自身が過去に経験したプロジェクトについて、設問で問われるテーマに沿って2,000字~3,000字程度の論文を作成する必要があります。
単なる暗記知識だけでは対応できず、実務経験に基づいた深い洞察力と論理的な文章構成力が不可欠なのです。
試験の対象者
情報処理推進機構(IPA)は、プロジェクトマネージャ試験の対象者像を、以下のように説明しています。
出典:IPA独立行政法人「プロジェクトマネージャ試験」
つまり、すでにプロジェクトマネージャーとして活躍している方や、これからプロジェクトマネージャーを目指すプロジェクトリーダー、シニアエンジニアなどが主な対象者となります。
豊富な実務経験を持つ人材が、その能力を客観的に証明するために受験するケースが多い試験です。
PMPとの違い
プロジェクトマネジメントに関する資格として、プロジェクトマネージャ試験としばしば比較されるのが「PMP(プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル)」です。
両者は似ているようで、その性質は大きく異なります。
プロジェクトマネージャ試験が日本のIPAが主催する国家試験であるのに対し、PMPは米国の非営利団体PMIが認定する国際資格です。
最も大きな違いは受験資格で、PMPを受験するには一定期間以上のプロジェクトマネジメント実務経験が必須となります。
知識体系や更新制度の有無なども含め、どちらが優れているということではなく、それぞれの特徴を理解した上で、自身の目的に合った資格を選択することが重要になるでしょう。
プロジェクトマネージャ試験(PM) | PMP | |
主催団体 | 情報処理推進機構(IPA) | Project Management Institute(PMI) |
資格種別 | 国家試験(日本) | 国際資格 |
受験資格 | 特になし | プロジェクトマネジメントの実務経験が必須 |
更新制度 | なし(一度合格すれば生涯有効) | あり(3年ごとに更新が必要) |
プロジェクトマネージャ試験が意味ないと言われる理由
これほど難易度が高いにもかかわらず、なぜ一部で「意味ない」と言われてしまうのでしょうか。
それには、IT業界ならではの文化や、試験内容と実務との間に存在するいくつかのギャップが関係しています。
IT業界は実務経験やスキルが重視されるから
IT業界、特に変化の速いWeb業界やスタートアップ企業では、資格の有無よりも「何を成し遂げてきたか」という具体的な実績や、「何ができるか」という実践的なスキルが重視される傾向が強いです。
どんなに立派な資格を持っていても、実際のプロジェクトを成功に導いた経験がなければ、優秀なプロジェクトマネージャーとは評価されにくいでしょう。
資格はあくまで能力を補完するものであり、「実務経験に勝る証明はない」という考え方が根底にあるため、「資格だけあっても意味がない」という声に繋がるのです。
試験内容と現場での仕事内容が乖離していることがあるから
プロジェクトマネージャ試験で問われるのは、体系化された理論に基づく、いわば「理想的な」プロジェクトマネジメントの手法です。
しかし、実際のプロジェクト現場は、予期せぬトラブルや仕様変更、複雑な人間関係の調整など、理論通りにはいかない泥臭い問題の連続です。
この理想と現実のギャップから、「試験で学んだ知識は、現場の生々しい問題解決には直接役立たない」と感じる経験者が少なくありません。
そのため、試験勉強に時間を費やすよりも、現場での経験を積んだ方がよほど実践的だ、という意見が出てくるのです。
資格を評価しない会社もあるから
企業によっては、プロジェクトマネージャ試験をはじめとする情報処理技術者試験を、人事評価や給与に直接反映させる制度を持っていない場合があります。
特に、独自の評価基準を持つ外資系企業や、技術力を最優先するベンチャー企業などでは、資格取得が昇進や昇給に結びつかないことも珍しくありません。
従業員からすれば、多大な努力をして難関資格を取得しても、会社からの評価という直接的な見返りがなければ、「取得しても意味がなかった」と感じてしまうのも無理はないでしょう。
他の資格の方が重要視されることもあるから
現在、多くのシステムがクラウド基盤上で構築されるのが当たり前になっています。
こうした状況では、プロジェクトマネジメントの汎用的な知識よりも、AWS(Amazon Web Services)やMicrosoft Azureといった特定のクラウドプラットフォームに関する専門知識の方が、プロジェクトを成功させる上で直接的に役立つ場面が増えています。
そのため、企業やプロジェクトによっては、プロジェクトマネージャ試験よりも、これらのベンダーが認定する資格の方が高く評価されるケースがあります。
自身のキャリアや参画したいプロジェクトの種類によっては、他の資格取得を優先した方が良い場合もあるのです。
プロジェクトマネージャ試験は難易度が高いのですごいという声もある
「意味ない」という意見がある一方で、この試験の合格者を「すごい」と評価する声が多いのもまた事実です。
その最大の理由は、前述の通り合格率がわずか15%前後という極めて高い難易度にあります。
この難関を突破したということは、それだけで相応の努力ができる、かつもともとの能力の持ち主であることの証明になります。
特に、午後Ⅱの論述式試験は、付け焼き刃の知識では到底太刀打ちできません。
自身のプロジェクト経験を、問題の意図に沿って論理的に再構成し、説得力のある文章として時間内に書き上げる能力が求められます。
これは、プロジェクトマネージャーに不可欠な「課題分析能力」「問題解決能力」「コミュニケーション能力」を間接的に示していると言えるでしょう。
そのため、合格者はプロジェクトマネジメントに関する体系的な知識と、それを実践に結びつける思考力を兼ね備えた、優秀な人材であると客観的に評価されるのです。
プロジェクトマネージャ試験が意味ないかどうかは人それぞれ
ここまで見てきたように、プロジェクトマネージャ試験には否定的な意見と肯定的な意見の両方が存在します。
結局のところ、プロジェクトマネージャ試験が「意味ない」のか、それとも「価値がある」のかは、絶対的な答えがあるわけではありません。
その価値は、資格を取得しようとする人の現在の立場やスキル、そして将来のキャリアプランによって大きく変わってきます。
詳しくは次の項目以降で、具体的なケースに分けて解説していきます。
プロジェクトマネージャ試験に合格しても意味がないケース
特定の状況にある人にとっては、多大な労力をかけてプロジェクトマネージャ試験に合格しても、残念ながらその恩恵をあまり受けられない可能性があります。
どのような場合に「意味がない」結果になりやすいのかを見ていきましょう。
十分な実績や実務経験がある
すでに大規模プロジェクトや難易度の高いプロジェクトをいくつも成功に導き、社内外から優秀なプロジェクトマネージャーとして認知されているベテランの方にとっては、資格取得の必要性は低いかもしれません。
その人の名前や実績自体が、資格以上に能力を雄弁に物語っているからです。
このような方にとって、資格はあくまで「実績に多少花を添える」程度のものであり、キャリアを左右するほどのインパクトはないでしょう。
実務未経験の状態でただ頑張って暗記して合格する
プロジェクトマネージャ試験には受験資格として実務経験が必須ではないため、理論上の学習だけで合格することも不可能ではありません。
しかし、実務経験のない学生や若手エンジニアがこの資格だけを持っていても、現場でプロジェクトを任せてもらえる可能性は極めて低いです。
経験に裏打ちされていない知識は、「ペーパーPM」と見なされかねません。
資格の価値は、実務経験と結びついて初めて真に発揮されるのです。
プロジェクトマネージャーを目指していない
当然のことながら、自身のキャリアプランと資格の目的が合致していなければ、取得する意味は薄れてしまいます。
例えば、技術を極めていくスペシャリスト(アーキテクトやテックリードなど)を目指しているエンジニアにとっては、プロジェクトマネジメントの知識よりも、より高度な技術系の資格の方がキャリアに直結します。
自身の目指す方向性を明確にすることが、資格取得を考える上での大前提となります。
今の会社が資格取得を重要視していない
現在勤務している会社に、資格手当や報奨金、昇進・昇格の要件としてこの資格が評価される制度がなければ、直接的なメリットを感じることは難しいでしょう。
もちろん、自己成長や知識の体系的な整理という内面的な価値はありますが、会社からの評価という外面的なインセンティブがない場合、かけた労力に見合わないと感じてしまうかもしれません。
プロジェクトマネージャ試験に合格する意味があるケース
一方で、多くの人にとってプロジェクトマネージャ試験の合格は、キャリアを大きく飛躍させるきっかけとなり得ます。
具体的にどのような人にとって、この資格は大きな意味を持つのでしょうか。
プロジェクトマネージャーとしての転職を考えている
転職市場において、プロジェクトマネージャ試験の合格は非常に強力な武器になります。
特に、これまで経験したことのない業界や、より大規模なプロジェクトを扱う企業へ転職を目指す場合、自身のマネジメント能力を客観的に証明する手段として絶大な効果を発揮するからです。
書類選考の通過率が上がったり、面接で自身のスキルを論理的にアピールしやすくなったりと、多くのメリットが期待できます。
実績だけでは伝わりにくいマネジメントスキルを、国家資格という形で保証してくれるのです。
資格手当が出る会社に勤務している
勤務先の企業に資格取得支援制度がある場合は、合格するメリットは非常に明確です。
合格時に一時金として報奨金が支給されたり、毎月の給与に資格手当が上乗せされたりする企業は少なくありません。
これは、学習へのモチベーションを維持する上で大きな助けになるでしょう。
金銭的なメリットだけでなく、会社がその資格を高く評価していることの証でもあり、将来的なキャリアアップにも繋がりやすくなります。
今はプロジェクトリーダーだが将来的にPMになりたいと思っている
現在プロジェクトリーダー(PL)やチームリーダーとして活躍しており、次のステップとしてプロジェクトマネージャー(PM)を目指している方にとって、この試験の学習プロセスそのものが大きな価値を持ちます。
試験勉強を通じて、これまで自己流や断片的な知識で行ってきたマネジメント業務を、体系的に学び直すことができるからです。
プロジェクトマネジメントの全体像を俯瞰的に理解することで、現在の業務に対する視点も変わり、より質の高い仕事ができるようになるでしょう。
まとめ
プロジェクトマネージャ試験が「意味ない」か「すごい」かという問いに対する結論は、「その人の置かれた状況と目的による」ということに尽きます。
豊富な実績を持つベテランや、マネジメント職を目指さないエンジニアにとっては、その価値は限定的かもしれません。
しかし、プロジェクトマネージャーとしてキャリアアップを目指す若手・中堅層や、転職によって自身の市場価値を高めたいと考えている方にとっては、計り知れない価値を持つ資格です。
重要なのは、資格取得そのものをゴールに設定しないことです。
プロジェクトマネージャ試験は、あくまで優れたプロジェクトマネージャーになるための一つの手段であり、通過点に過ぎません。
自身のキャリアプランと照らし合わせ、この資格が本当に必要かどうかを冷静に見極めた上で、挑戦するかどうかを判断してください。