TypeScriptの将来性は？不要論があるのはなぜ？特徴やメリットを解説

Web開発の世界で注目を集めるプログラミング言語、TypeScript。
その将来性に大きな期待が寄せられる一方で、「TypeScriptは不要だ」という意見も一部で見られます。

そこでこの記事では、TypeScriptがどのような言語なのか、なぜ不要論が存在するのかを解説します。

さらに、TypeScriptの将来性が高いと言える根拠や、開発におけるメリット・デメリットなども紹介していきますので、是非参考にしてください。

TypeScriptとは

TypeScriptは、Microsoftによって開発され、2012年に登場したオープンソースのプログラミング言語です。
JavaScriptに対して、静的型付けの機能を追加した上位互換の言語として設計されました。

そのため、既存のJavaScriptのコードは、すべて有効なTypeScriptのコードとして扱うことができ、JavaScriptが動作する環境であればどこでも利用可能です。

TypeScriptで書かれたコードは、最終的に「トランスパイル」という処理を経て、ブラウザが解釈できるプレーンなJavaScriptコードに変換されます。

この仕組みにより、開発段階では型の恩恵を受けつつ、実行環境の互換性を保つことができるのです。

TypeScriptの特徴

TypeScriptが持つ最大の特徴は、静的型付け言語である点にあります。

静的型付けとは、プログラムを実行する前に、変数や関数の引数、戻り値などに「型」を定義する仕組みです。

例えば、ある変数には数値（number）しか入らない、別の変数には文字列（string）しか入らない、といったルールをあらかじめ決められます。

この静的型付けにより、意図しないデータが代入されるといったヒューマンエラーを、コード実行前に検知することが可能になります。

JavaScriptの柔軟性を維持しつつ、堅牢なプログラムを構築できる点が、TypeScriptが多くの開発現場で支持される理由の一つでしょう。

JavaScriptとの違い

TypeScriptとJavaScriptの最も大きな違いは、「型」の扱いにあります。

JavaScriptは「動的型付け言語」であり、実行時に変数の型が自動的に決まります。
コードの記述が手軽である反面、型に起因するエラーはプログラムを実行してみるまで発見が困難でした。

一方、TypeScriptは前述の通り「静的型付け言語」です。

コードを書いている段階で型を定義するため、エディタやコンパイラが間違いを即座に指摘してくれます。

TypeScriptとJavaScriptの違いを、以下の表にまとめます。

	TypeScript	JavaScript
型付け	静的型付け	動的型付け
エラー検出	コンパイル時（実行前）	実行時
コードの記述	型定義が必要なため、やや冗長	簡潔に記述可能
開発規模	大規模開発に向いている	小規模〜中規模開発に強い
ツール支援	型情報による強力な補完機能	限定的な補完機能

このように、TypeScriptはJavaScriptに「静的型付け」という強力な武器を加えることで、コードの品質と開発効率を飛躍的に向上させる言語なのです。

TypeScriptに不要論があるのはなぜ？

TypeScriptの将来性が高く評価される一方で、「不要ではないか」という議論が生まれているのも事実です。

その背景にはいくつかの理由が存在します。

一つ目として、学習コストの問題が挙げられます。
JavaScriptの知識に加えて、静的型付けやジェネリクス、インターフェースといったTypeScript独自の概念を習得する必要があり、初心者にとってはハードルが高く感じられるかもしれません。

二つ目として、開発プロセスに「コンパイル」という一手間が加わる点も指摘されます。
コードを修正するたびにJavaScriptへの変換が必要になるため、小規模なプロジェクトや素早いプロトタイピングが求められる場面では、その手間が開発スピードを若干低下させると感じる開発者もいます。

三つ目として、型定義を記述する必要があるため、JavaScriptに比べてコードの記述量が必然的に多くなります。
ごく小さなスクリプトや個人開発の範囲では、TypeScriptがもたらす厳密さがかえって過剰な制約となり、冗長に感じられるケースもあるでしょう。

【不要論は間違い】TypeScriptの将来性が高い理由

上記のように、一部で不要論も囁かれますが、多くの客観的なデータや事実がTypeScriptの明るい将来性を示しています。

ここでは、TypeScriptの将来性が高い理由について解説していきます。

あのMicrosoftが開発した言語

TypeScriptは、WindowsやAzureなどで知られる巨大IT企業、Microsoftによって開発およびメンテナンスが行われています。

企業が主導して開発する言語は、継続的なアップデートや手厚いサポートが期待できるため、技術としての信頼性が非常に高いと言えるでしょう。
ましてや、GAFAMの一角であるMicrosoftですから、その信頼性は格別です。

実際にTypeScriptは定期的にバージョンアップが繰り返され、常に進化を続けています。
個人の開発者が主導するオープンソースプロジェクトとは異なり、長期的な視点での安定した開発基盤が保証されている点は、企業が技術選定を行う上で大きな安心材料となります。

Googleの標準言語となっている

TypeScriptの信頼性をさらに高めているのが、Microsoftの競合でもあるGoogleが、社内における標準開発言語の一つとしてTypeScriptを採用したという事実です。

Googleは2017年にこの決定を発表し、主要なWebフレームワークである「Angular」もTypeScriptをベースに開発しています。

世界をリードする二大IT企業がその価値を認め、積極的に利用している事実は、TypeScriptが単なる流行ではなく、現代のWeb開発において不可欠な技術であることを証明していると言えるでしょう。

大規模開発では特に採用されやすくなっている

プロジェクトの規模が大きくなり、関わる開発者の数が増えるほど、TypeScriptの静的型付けがもたらす恩恵は大きくなります。

コードに型情報が含まれていることで、変数や関数がどのようなデータを扱うのかが一目瞭然になり、他の人が書いたコードでも意図を理解しやすくなります。

これにより、コードの可読性と保守性が大幅に向上します。

また、コンパイル時にエラーを検出できるため、実行時のバグを未然に防ぎ、アプリケーション全体の品質を高めることが可能です。

SlackやAirbnbといった多くのグローバル企業が、大規模サービスの開発にTypeScriptを採用している事例からも、その有効性がうかがえます。

定期的なアップデートにより改善が続いている

TypeScriptは非常に活発なコミュニティとMicrosoftのサポートにより、定期的なバージョンアップが続けられています。

新しいECMAScript（JavaScriptの標準仕様）の機能をいち早く取り入れたり、より便利で安全な型表現を追加したりと、常に改善が行われています。

開発が停滞せず、時代や開発者のニーズに合わせて進化し続けている点は、将来にわたって安心して使い続けられる技術であることの証です。

GitHubの年次レポート「Octoverse」でも、TypeScriptは常に最も使用される言語の上位にランクインしており、世界中の開発者から支持され続けていることがわかります。

JavaScriptの知識があれば学習コストが低い

TypeScriptはJavaScriptの上位互換であるため、すでにJavaScriptを習得している開発者にとっては、学習のハードルが比較的低いという利点があります。

JavaScriptの文法や概念はそのまま通用するため、静的型付けなどのTypeScript独自の機能を追加で学ぶだけで済みます。
全く新しい言語をゼロから学ぶのに比べれば、はるかに効率的にスキルを習得できるでしょう。

既存のJavaScriptプロジェクトに部分的にTypeScriptを導入することも可能なため、段階的に移行を進められる点も、多くの開発現場で採用が進む一因となっています。

TypeScirptのメリット

TypeScriptを導入することで、開発者は多くの恩恵を受けることができます。

特に品質、保守性、そして開発効率の面で大きなメリットをもたらします。

エラーの早期発見による品質向上

TypeScriptの最大のメリットは、静的型付けによってプログラムの実行前に多くのエラーを発見できることです。

例えば、数値を期待する関数に誤って文字列を渡してしまった場合、JavaScriptでは実行時に予期せぬエラーが発生する可能性があります。

しかし、TypeScriptではコードを書いている段階でエディタが「型が違います」と警告し、コンパイル時にエラーとして検出してくれます。

これにより、単純なタイプミスや勘違いに起因するバグが大幅に減り、アプリケーション全体の品質と安定性が向上するのです。

コードの可読性と保守性の向上

コードに型が明記されていることは、「プログラムのわかりやすさ」につながります。
変数名や関数名だけではわかりづらかったデータ構造や処理内容が、型定義を見るだけで明確に理解できるようになるのです。

新しいメンバーがプロジェクトに参加した際や、将来的に自分が書いたコードを修正する際に、コードの意図を素早く把握できるため、開発効率が向上するでしょう。

コードの可読性が高まることで、長期的なメンテナンスが容易になる点は、特にチーム開発や大規模プロジェクトにおいて非常に大きな利点です。

高度なエディタサポートによる開発効率化

Visual Studio Codeをはじめとする現代の多くのコードエディタは、TypeScriptを強力にサポートしています。

エディタはコードの型情報を解析し、非常に正確なコード補完や、関数・変数の定義元へのジャンプ、安全なリファクタリング（コードの内部構造の改善）機能などを提供します。

これらの支援機能により、開発者はより速く、より間違いの少ないコーディングが可能になります。

タイプミスを防ぎ、ライブラリのAPIを覚えなくても済むため、開発効率が向上し、生産性が大幅に高まるでしょう。

TypeScirptのデメリット

多くのメリットがある一方で、TypeScriptには導入前に考慮すべきデメリットも存在します。

学習コストや開発プロセスの変更点が、主な課題と言えるでしょう。

JavaScriptに比べた学習コストの発生

TypeScriptを使いこなすには、JavaScriptの知識に加えて、型システムに関する新たな知識を習得する必要があります。

interfaceやtypeによる型定義、generics（ジェネリクス）による抽象的な型の扱い、enum（列挙型）など、TypeScript独自の概念を理解しなければなりません。

JavaScriptの手軽さに慣れている開発者にとっては、これらの新しいルールを学ぶことが負担に感じられる可能性があります。

特にプログラミング初学者が最初からTypeScriptを学ぶ場合、JavaScriptよりも学習コストが高くなってしまうかもしれません。

コンパイルの手間と時間

TypeScriptで書かれたコードは、ブラウザやNode.jsで実行するために、一度JavaScriptのコードに変換する「コンパイル（トランスパイル）」という工程が必要です。

小規模な修正であっても、このコンパイル処理を挟むため、コードを書いてから実行結果を確認するまでのサイクルがJavaScriptのみの場合と比較して一手間増えることになります。

最近の開発ツールではこのプロセスが自動化され、高速になっていますが、プロジェクトの規模が大きくなるとコンパイルに時間がかかることもあり、開発フローに影響を与える可能性があります。

小規模開発では過剰になる可能性

個人開発の小さなWebサイトや、一時的に使用する簡単なツールなど、小規模なプロジェクトにおいてはTypeScriptの厳格さがかえって足かせになることがあります。

すべての変数や関数に型を定義していく作業が、開発のスピード感を損なうと感じられるかもしれないからです。

プロジェクトの規模や目的に応じて、TypeScriptを導入するかどうかを慎重に判断する必要があるでしょう。

TypeScriptエンジニアの平均年収

TypeScriptのスキルを持つエンジニアは、現代のWeb開発市場において高い需要があり、その需要は当然年収にも反映されます。

paiza株式会社の調査によると、転職における言語別の年収ランキングは以下のようになっています。

順位	言語	平均年収
1位	Scala	682.9万円
2位	TypeScript	667.1万円
3位	Go	659.0万円
4位	Python	644.7万円
5位	Kotlin	644.1万円

ご覧の通り、TypeScriptは「2位」で、平均年収は「667.1万円」となっています。
このデータからも、TypeScriptが「稼げる言語」の一つであることが伝わるでしょう。

特に、ReactやVue.jsといったモダンなJavaScriptフレームワークと組み合わせたスキルを持つエンジニアは、フロントエンド開発の現場で重宝され、より高い報酬が期待できます。

企業のDX化が進む中、堅牢なアプリケーション開発を支えるTypeScriptのスキルは、今後もエンジニアとしての将来性を高める重要な要素です。

TypeScriptを学習する方法

これからTypeScriptを学びたいと考えている方に向けて、効果的な学習方法をいくつか紹介します。

自身のレベルや学習スタイルに合わせて、最適な方法を選択してください。

公式ドキュメントを活用する

TypeScriptの学習を始めるにあたり、まず参照すべきなのがTypeScriptの公式ドキュメントです。
開発元であるMicrosoftが提供している公式ドキュメントは、最も正確で最新の情報が網羅されています。

基本的な文法から高度な機能まで、体系的にまとめられており、サンプルコードも豊富です。
日本語にも翻訳されているため、英語が苦手な方でも安心して学習を進めることが可能です。

「Handbook」セクションを順に読み進めることで、TypeScriptの全体像を効率的に掴むことができるでしょう。

Microsoftによる公式ドキュメントは、信頼性の高い情報源として、学習中はもちろん実務に入ってからも常に手元に置いておきたいリソースです。

オンライン学習サイトを利用する

わかりやすい動画での解説や、実際に手を動かしての学習を通じて学びたい場合は、オンライン学習プラットフォームの利用がおすすめです。

Progateやドットインストールといったサイトでは、初心者向けのTypeScript入門コースが数多く提供されています。

動画を見ながら実際にコードを書く形式のものが多く、視覚的に理解しやすいのが特徴です。
自分のペースで学習を進められ、不明な点があれば繰り返し復習できる点もメリットです。

基礎から応用まで、段階的にスキルを身につけたい方に適した学習方法と言えます。

プログラミングスクールに通う

独学での学習に不安を感じる方や、短期間で集中的にスキルを習得したい方には、プログラミングスクールが有効な選択肢となります。

スクールでは、専門の講師やメンターから直接指導を受けられるため、疑問点をその場で解決できます。
また、カリキュラムが体系的に組まれており、実務を想定した課題に取り組むこともできるので、より実践的なスキルが身につきます。

一緒に学ぶ仲間がいることでモチベーションも維持しやすく、キャリアサポートを受けられる場合も多いです。

費用はかかりますが、効率的に学習を進め、エンジニアとしてのキャリアをスタートさせたい場合には投資する価値があるでしょう。

初心者向けの優良プログラミングスクールを探している場合は、以下の記事が参考になるはずです。

まとめ

以上、TypeScriptの将来性、不要論の背景、そして具体的なメリットやデメリットについて解説しました。

TypeScriptは、MicrosoftとGoogleという二大巨頭が支持し、大規模開発を中心に採用が拡大している言語です。

各種調査データが示すように、TypeScriptを扱えるエンジニアの需要と市場価値は高く、今後もその傾向は続くと予想されます。

これからWeb開発のスキルを身につけたい方、またJavaScriptエンジニアとしてキャリアアップを目指す方にとって、TypeScriptの習得は将来的に必ずプラスとなるはずです。