Web業界への就職・転職や副業を検討する際、「Web制作」と「Web開発」では何が違うのかと迷う方も多いでしょう。

「Web制作をする人間もエンジニアだ」という話を聞くと、怒ってしまうエンジニアの方もいるほどです・・・。
それぐらい、両者の間には開きがあります。
そこでこの記事では、一見似たようなものに見える「Web制作」と「Web開発」において、具体的にどういった部分が違うのかについて、詳しく解説していきます。

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Web制作とは

Web制作とは、主に企業や個人の情報を発信するための「Webサイト」を作成する業務を指します。
具体的には、以下のようなサイト・ブログの作成が対象となります。
- コーポレートサイト
- サービスサイト
- ランディングページ(LP)
- 採用サイト
- ブログメディア
Web制作の最大の目的は、情報をユーザーに正しく、魅力的に伝えることにあります。
そのため、視覚的な美しさや情報の探しやすさ(UI/UX)、そして検索エンジンで見つけてもらうためのSEO対策が非常に重要視されます。
今では、従来のHTMLやCSSを使ったコーディングに加え、ノーコードツールを活用した制作も一般的になっています。
しかし、クライアントの要望に応じた細かいカスタマイズやアニメーションの実装には、依然として高度なコーディング技術が必要になるため、ノーコードツールだけで質の高いWeb制作を実現するのは難しいでしょう。
ちなみに、Web制作はインターネット上における「顔」や「看板」を作る仕事だと言い換えるとわかりやすいかもしれません。
Web開発とは

Web開発とは、IT技術を用いて、特定の機能を持った「Webアプリケーション」や「Webシステム」を構築する業務を指します。
Web開発の具体例としては以下の通りです。
- X(旧Twitter)やInstagramなどのSNS
- Amazonや楽天などのECサイト
- YouTubeのような動画配信サービス
- メルカリやヤフオクなどの独自Webサービス
Web開発の肝は、ユーザーのアクションに応じて表示内容が変わる「動的コンテンツ」を作り出す点にあります。
データベースと連携し、ユーザー登録機能、商品の検索機能、決済機能、メッセージの送受信機能など、複雑な処理を裏側で実行する仕組みを構築します。
単に画面を表示するだけでなく、サーバーの構築やセキュリティ対策、大量のアクセスに耐えうるインフラ設計などもWeb開発の重要な範疇です。
Web開発は、インターネット上で動く「便利な道具」や「社会インフラ」を作る仕事と言えます。
Web制作とWeb開発の違い

Web制作とWeb開発は、どちらもWebブラウザ上で動作するものを作るという点では共通していますが、その中身は大きく異なります。
料理に例えるなら、Web制作は見た目の美しさと味わいを追求する「パティシエ」や「料理人」、Web開発は効率的な調理器具やキッチンシステムそのものを作る「技術者」、といった形です。
ここでは、仕事内容、スキル、難易度、期間、職種、報酬という6つの観点から、Web制作とWeb開発の違いを詳しく掘り下げていきます。
仕事内容の違い
Web制作の仕事は、クライアントの要望をヒアリングし、それを視覚的なデザインとコードに落とし込むことが中心です。
Web制作の具体的な仕事内容の例は以下の通りです。
- サイトの構成案(ワイヤーフレーム)の作成
- PhotoshopやFigmaを用いたデザイン制作
- HTML/CSS/JavaScriptを用いたコーディング作業
ユーザーの目に触れる「フロントエンド」部分の構築がメインであり、見た目の美しさや使い勝手が成果物の評価に直結します。
一方、Web開発の仕事は、システム要件を定義し、プログラミング言語を使ってロジックを構築することが中心です。
Web開発の具体的な仕事内容の例は以下の通りです。
- データベースの設計
- サーバーサイドのプログラミング
- APIの連携
- バグのない動作確認(テスト)
ユーザーの目には見えない「バックエンド」部分の構築がメインであり、システムの安定性、処理速度、セキュリティの堅牢さが評価の基準となります。
Web開発では、美しさよりも「エラーなく正確に動くこと」が何よりも優先されるのです。
身に付けるべきスキルの違い
Web制作とWeb開発では、習得すべきプログラミング言語やツールが明確に分かれています。
それぞれの分野で必須となるスキルセットは以下の通りです。
■HTML / CSS(Webページの骨組みと装飾)
■JavaScript / jQuery(Webページに動きをつけるための言語)
■Figma / Adobe XD / Photoshop(デザインツール)
■WordPress(CMSの知識)
■SEOやWebマーケティングの基礎知識
■PHP / Ruby / Python / Java / Goなどのサーバーサイド言語
■Laravel / Ruby on Railsなどのフレームワーク
■MySQL / PostgreSQLなどのデータベース知識
■AWS / Azure / GCPなどのクラウドインフラ知識
■Git / Dockerなどの開発支援ツール
Web制作はデザインとコーディングの両輪が必要ですが、Web開発は論理的なプログラミング能力とインフラ周りの幅広い知識が求められます。
難易度の違い
学習を始めてから実務レベルに達するまでの難易度に関しては、圧倒的にWeb制作の方が参入障壁が低いです。
HTMLやCSSは直感的に理解しやすく、書いたコードの結果がすぐに画面に反映されるため、挫折しにくい傾向にあります。
スクールに通えば、2~3ヶ月程度でWeb制作に必要なスキルを習得し、簡単な案件を獲得することも可能です。
対照的に、Web開発の難易度は高いと言えます。
プログラミング言語の文法だけでなく、アルゴリズムの理解、サーバーやネットワークの知識、データベースの設計など、覚えるべきことが膨大にあります。
エラーが発生した際の原因特定も難しく、論理的思考力が強く求められます。
未経験者にとっては、Web制作よりもハードルが高いのが現実です。
制作・開発期間の違い
プロジェクトにかかる期間も、Web制作とWeb開発では大きな開きがあります。
Web制作の場合、ランディングページであれば1〜2週間、一般的なコーポレートサイトであれば1〜3ヶ月程度で納品まで完了することが多いです。
案件の回転が速いため、短期間で多くの実績を積むことができます。
Web開発の場合、小規模なシステムでも3ヶ月、大規模なWebサービスや基幹システムのリニューアルとなると半年から1年以上かかることも珍しくありません。
また、リリース後も機能追加や保守運用などで、数年にわたって同じプロジェクトに携わり続けることもあります。
職種の違い
Web制作とWeb開発では、プロジェクトに関わる職種の名称も異なります。
求人を探す際や自身のキャリアパスを考える上で、この職種名の違いを理解しておくことは非常に重要です。
■Webデザイナー:サイトの見た目やレイアウトを設計・デザインする職種。
■コーダー:デザインを元にHTML/CSSでコードを書く職種。
■フロントエンドエンジニア:JavaScriptなどを用いて高度なUI実装を行う職種。
■Webディレクター:制作進行管理や品質管理を行うリーダー職。
■バックエンドエンジニア:サーバー側の処理やデータベースの実装を行う職種。
■インフラエンジニア:サーバー構築やネットワーク環境を整備する職種。
■SE(システムエンジニア):顧客折衝やシステム設計を行う職種。
■フルスタックエンジニア:フロントからバックエンドまで一人でこなす職種。
報酬単価の違い
一般的に、Web制作よりもWeb開発の方が報酬単価や年収は高くなる傾向にあります。
これは、Web開発の方が習得すべきスキルの難易度が高く、対応できる人材が不足しているという需給バランスが影響しています。
Web制作の案件は、クラウドソーシングなどでも安価で発注されるケースが増えており、単価競争が激しくなっています。
経済産業省の調査などでも、IT人材(特に先端IT従事者)の給与水準は他職種と比較して高いことが示されています。
ただし、Web制作であっても、マーケティング視点を持った提案ができる人材や、高度なUI/UXデザインができる人材は高収入を得ています。
Web制作とWeb開発の共通点

ここまで違いを強調してきましたが、Web制作とWeb開発には共通点も存在します。
最も大きな共通点は、どちらも「クライアントの課題を解決するためにWeb技術を使う」という点です。
「売上を上げたい」「業務を効率化したい」といった目的を達成する手段として、WebサイトやWebシステムが存在します。
また、チームでのコミュニケーションが不可欠である点も同じです。
デザイナー、エンジニア、ディレクターが連携し、一つのプロジェクトを完成させるプロセスは共通しています。
さらに、IT業界は技術の進化が速いため、制作であれ開発であれ、常に新しい技術やトレンドを学び続ける姿勢が求められる点も変わりません。
Web制作とWeb開発、これから目指すならどっち?

「Web制作」と「Web開発」のどちらを目指すべきかは、個人の適性やキャリアの目標によって異なります。
どちらかが優れているというわけではありません。
Web制作の方が案件数が豊富で、初期学習コストも比較的低いからです。
最新の動向として、Web制作はノーコードツールの台頭により二極化が進んでいます。
そのため、単なるデザインやコーディングだけでなく、マーケティングやバックエンドへの理解なども求められるようになってきています。
Web開発も、AI活用やセキュリティ対応など、より高度な技術的課題への対応力が必要になってきています。
こういった点を加味して、「Web制作とWeb開発、転職するならどっちを選ぶべきか?」という悩みと向き合ってもらえればと思います。
Web制作が向いている人の特徴

ここまで解説してきたWeb制作とWeb開発の違いや共通点などを踏まえて、Web制作に向いている人の特徴について紹介していきます。
Web制作の仕事に適性があるのは、視覚的な表現への関心が高く、ユーザーの目線に立って物を作ることが好きな人です。
具体的な特徴として、以下の3点が挙げられます。
デザインを作ることが好き
Web制作は、文字の大きさ、余白の取り方、配色のバランスなど、見た目の美しさが品質に直結します。
「きれいなWebサイトを見るとワクワクする」
こういった感性を持っている人は、Web制作の仕事に大きなやりがいを感じるでしょう。
自分で描いたデザインがそのままWebページとして形になる喜びは、Web制作ならではの醍醐味です。
細かな作業が苦にならない
コーディング作業では、1ピクセルのズレやわずかな色の違いを調整する緻密さが求められます。
また、スマホやPCなど異なる画面サイズでも崩れずに表示されるよう、細部まで気を配る必要があります。
こうした細かい調整作業を「面倒だ」と感じず、こだわりを持って取り組める几帳面な性格の人は、質の高いWeb制作者として重宝されます。
客観的に物事を考えるのが得意
Webサイトは、「ユーザーに見てもらい、使ってもらう」ために存在します。
自分の好みだけで作るのではなく、「初めて訪れた人が迷わないか」「このボタンは押しやすい位置にあるか」といったUI/UXの視点が不可欠です。
常にユーザーの立場に立ち、客観的に自分の作ったものを評価・改善できる思考力を持つ人は、Web制作の現場で活躍できます。
Web開発が向いている人の特徴

Web開発の仕事に適性があるのは、論理的な思考が得意で、システムの裏側の仕組みに興味を持てる人です。
具体的な特徴として、以下の3点が挙げられます。
論理的に物事を考えることが好き
プログラミングは論理の積み重ねです。
「もしAならばBをする、そうでなければCをする」といったロジックを組み立て、効率的に処理を実行させる必要があります。
感情ではなく、ロジックで動く世界を楽しめるかが鍵となります。
最新技術への興味が強い
Web開発の世界では、新しいプログラミング言語、フレームワーク、開発ツールが次々と登場します。
1年前までの常識が、今日には古くなっていることも珍しくありません。
こうした変化をストレスと感じるのではなく、「新しい技術を触ってみたい」「もっと便利な方法を知りたい」と知的好奇心を持って追いかけられる人は、エンジニアとして成長し続けることができます。
年収の高さにこだわりたい
前述の通り、Web開発を行うエンジニアは専門性が高く、市場価値が高い職種です。
特に、経験を積み、上流工程(設計や要件定義)を任されるようになると、年収1000万円を超えることも珍しくありません。
「将来的な資産となるスキルを身につけたい」
こういった現実的な目標を持っている人にとって、Web開発は非常に魅力的な選択肢となります。
まとめ
繰り返しになりますが、Web制作とWeb開発は、似ているようで全く異なる職種です。
Web制作は「Webサイト」という情報のショーケースを作り、Web開発は「Webシステム」という機能的なツールを作ります。
どちらの道を選ぶにしても、まずは実際に簡単なHTML/CSSを触ってみたり、プログラミングの基礎学習を始めてみたりすることをおすすめします。
手を動かすことで、自分には「見た目を作る楽しさ(Web制作)」と「仕組みを作る楽しさ(Web開発)」のどちらが合っているのかが、より明確に見えてくるはずです。
自身の適性と将来の目標を照らし合わせ、後悔のないキャリア選択をしてください。

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