PythonでWebサイトを作る際に最も人気のあるフレームワークが「Django(ジャンゴ)」です。
Instagram、Pinterest、Spotifyなど、我々が日常的に利用している世界的なサービスの多くがDjangoで構築されています。
そこでこの記事では、Djangoの特徴やメリット・デメリット、具体的に何ができるのか、Djangoで作られたサイトなどについて詳しく解説していきます。
初心者の方にもわかりやすいように解説していますので、Pythonを使ったWebサイト開発を検討している方は是非参考にしてください。
【本記事の信頼性】
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Django(ジャンゴ)とは?
Django(ジャンゴ)は、Web開発のためのフレームワークで、現在では世界中で最も人気のあるPythonのフレームワークとなっています。
「完璧を求める人のための、締切のあるWebフレームワーク」がキャッチフレーズで、素早くWebサイトが作れることを重視しています。
現在では180万以上のWebサイトがDjangoで作られており、多くの有名サイトもDjangoで構築されています。
Djangoを使うことで、普通なら何ヶ月もかかるWebサイトやWebアプリの開発が、数週間で完成することも珍しくありません。
開発に必要な機能がほとんど最初から用意されているので、一から作る手間が省けるのです。
Djangoの特徴やメリット
Djangoが多くの開発者に愛される理由は、Web開発を劇的に効率化する以下の5つの特徴・メリットがあるからです。
初心者でも安全で高品質なWebサイトを短期間で作れる仕組みが整っているため、世界中の企業や個人開発者がDjangoを選んでいます。
以下の項目で、Djangoの具体的なメリットについて解説していきます。
Web開発に必要な機能が一通り揃っているフルスタックフレームワーク
Djangoは、「必要なものは全部入っている」という考え方で作られています。
通常、Webサイトを構築する際は複数のツールを組み合わせる必要がありますが、Djangoなら開発に必要な機能が最初から揃っています。
例えば、ユーザーの会員登録機能、管理者画面、データベースとの連携、お問い合わせフォームなど、Webサイトでよく使われる機能がすべて標準装備されているのです。
これにより、外部ツールを探したり設定したりする手間が大幅に削減されるでしょう。
2025年版では、開発環境の設定がさらに簡素化され、初心者でもスムーズに開発を始められるようになりました。
MTVアーキテクチャにより保守性の高いコードが書ける
Djangoは、MTV(Model-Template-View)という仕組みを使って、プログラムを整理しています。
これは、家の設計図のようなもので、「データを管理する部分」「処理をする部分」「画面を表示する部分」をきちんと分けて管理する方法です。
この仕組みのおかげで、後からWebサイトを修正したり、新しい機能を追加したりするのが簡単になります。
また、チームで開発するときも、それぞれの人が担当する部分が明確になるので、効率よく作業できます。
長期間運営するWebサイトを作るときには、この整理された構造がとても重要になります。
強力なORMによりSQLを直接書く必要が少ない
ORMとは、データベース操作をPythonのコードで直接実行できる機能です。
通常、データベースを操作するには「SQL」という専門的な言語を習得する必要がありますが、DjangoのORMを使用すればPythonの文法でデータベース操作を行えます。
例えば、「20歳以上のユーザーをすべて表示する」といった処理も、複雑なSQLクエリを記述することなく、Pythonのシンプルな記述で実現できます。
最新の「Django 5.2」では、複合主キーがサポートされ、より複雑なデータ構造にも対応可能になりました。
また、非同期データベースアクセスも強化されており、パフォーマンスの向上も図られています。
豊富なミドルウェアを簡単に追加できる
ミドルウェアとは、Webサイトに追加機能を組み込むための仕組みです。
セキュリティ強化、アクセスログの記録、キャッシュ機能の追加など、様々な機能を既存のコードを大幅に変更することなく導入できます。
これは、スマートフォンにアプリをインストールする感覚に似ており、必要な機能があれば簡単に追加できるシステムとなっています。
Djangoには標準で多数の有用なミドルウェアが用意されており、世界中の開発者が作成した追加機能も自由に利用可能です。
プロジェクトの規模に関係なく、要件に応じて柔軟に機能拡張を行えるでしょう。
セキュリティ機能が充実している
Djangoは「最初から安全」という考え方で作られており、Webサイトでよくある攻撃を自動的に防いでくれます。
例えば、悪意のある人がWebサイトを乗っ取ろうとしたり、偽のデータを送信したりする攻撃から、Webサイトを守ってくれるのです。
パスワードの安全な保存方法や、ユーザーの権限管理なども、複雑な知識がなくても安全に実装できます。
セキュリティの専門知識がなくても、企業レベルの安全なWebサイトを構築できるでしょう。
Djangoを利用するデメリット
多くのメリットがあるDjangoですが、使用前に知っておくべきデメリットも存在します。
特に初心者の方や小規模プロジェクトを検討している方は、以下の3つのデメリットを理解した上で導入を検討することが大切です。
学習コストが高い
Djangoはたくさんの機能があるため、すべてを覚えて使いこなせるようになるまでには時間がかかります。
プログラミング初心者の場合、覚えることが多すぎて最初は戸惑うかもしれません。
ただし、Djangoの公式ガイドはとても分かりやすく書かれており、世界中にたくさんの学習資料があります。
最初は基本的な機能から始めて、少しずつ新しい機能を覚えていけば問題ないでしょう。
一度覚えてしまえば、その後の開発がとても楽になるので、学習時間を投じる価値は十分にあります。
機能が豊富すぎて小規模なプロジェクトには適さない
Djangoは「大規模なWebサイトの構築」を想定して設計されているため、簡単なWebページや小さなアプリには機能が多すぎる場合があります。
例えば、個人の日記サイトや簡単な情報表示ページなどには、もっとシンプルなフレームワークの方が適しているかもしれません。
しかし、将来的にWebサイトを拡張する予定がある場合や、本格的なWebサービスを作りたい場合には、最初からDjangoを選んでおくことをおすすめします。
後から別のフレームワークに移行するよりも、最初からDjangoで始めた方が効率的です。
処理速度がやや遅め
Djangoは機能が豊富な分、シンプルなフレームワークと比べると動作がやや重くなることがあります。
特に、リアルタイムで高速な処理が必要なアプリケーションでは、速度の遅さが問題になる場合もあるでしょう。
とはいえ、2025年版のDjango 5.2では処理速度が改善されており、適切な設定を行えば、多くの場合十分な速度で動作します。
実際に、InstagramやPinterestのような数億人が使うサービスでもDjangoが使われているので、正しく使えば速度の問題は解決できます。
Djangoで何ができる?できること・作れるもの
Djangoの汎用性の高さは、作れるWebサイトの種類の豊富さに表れています。
個人ブログから大企業の業務システムまで、あらゆるジャンルのWebサイト・アプリケーションを構築することが可能です。
ここでは、代表的な8つの用途を、具体例とともに紹介していきます。
CMS
CMS(コンテンツ管理システム)は、ブログ記事やニュース記事を効率的に投稿・編集できるWebサイトです。
Djangoには管理者用インターフェースが標準で組み込まれているため、記事の作成や編集作業を直感的に行えます。
WordPressなどの既存CMSとは異なり、プロジェクトの要件に完全に適合したオリジナルCMSを構築できます。
企業のニュースサイト、個人ブログ、商品カタログサイトなど、どのようなコンテンツタイプでも効率的に管理可能です。
実際に、The Washington PostやThe Guardianなどの大手メディア企業もDjangoベースのCMSを運用しています。
ECサイト
ECサイト(オンラインショップ)では、商品管理、在庫管理、決済処理、注文管理など、複雑な機能が求められます。
しかしDjangoならば、これらの機能をすべて安全に実装できます。
顧客の個人情報やクレジットカード情報を安全に処理するセキュリティ機能も標準で提供されているため、信頼性の高いオンラインショップを運営できるでしょう。
また、商品レビューシステム、クーポン機能、会員制度なども効率的に開発でき、既存の決済サービス(Stripe、PayPalなど)との連携も容易に実現できます。
SNS
Instagram、Pinterest、Redditなど、有名なSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の多くがDjangoで作られています。
ユーザー登録、プロフィール作成、投稿機能、いいね・コメント機能、フォロー機能など、SNSに必要な機能をすべて実装できるのです。
写真や動画の投稿、リアルタイムの通知機能、メッセージのやり取りなども可能で、数千万人が使うようなSNSでも対応できます。
また、AIを使ったおすすめ機能やスパム対策なども、Pythonの豊富なライブラリを活用して実現できるでしょう。
業務用アプリケーション
会社で使う業務システム(社員管理、顧客管理、在庫管理など)も、Djangoで効率的に作れます。
特に、Djangoの管理画面機能を使えば、プログラムの知識がない人でも簡単に操作できるシステムを作ることが可能です。
例えば、営業部門の顧客情報管理システムや、人事部門の社員情報管理システムなど、部署ごとに必要な機能を自由に組み合わせて作れます。
既存のExcelファイルからデータを移行することも簡単で、会社の業務効率化に大きく貢献できるでしょう。
ユーザー認証システム
ユーザー認証システムとは、会員登録やログイン機能のことです。
Djangoには高度な認証機能が最初から組み込まれており、FacebookやGoogleアカウントでのログイン機能も簡単に追加できます。
パスワードの安全な管理、二段階認証、アカウントの乗っ取り防止など、企業レベルのセキュリティ機能も実装可能です。
会員制サイトやオンラインサービスを作る際には、この認証機能の充実度がとても重要になるでしょう。
Djangoなら、セキュリティの専門知識がなくても安全な会員制サイトを作ることができます。
ニュース・メディアサイト
ニュースサイトや情報発信サイトでは、大量の記事を効率的に管理し、多くの読者に安定して情報を届ける必要がありますが、Djangoならば、記事の投稿・編集・公開スケジュール設定などが簡単に実現できます。
また、検索エンジンで上位表示されやすい構造でサイトを作ることも可能で、より多くの人に記事を読んでもらえるようになります。
コメント機能やソーシャルメディア連携も標準で実装でき、読者との交流も活発にできるでしょう。
予約システム
レストラン、美容院、病院、会議室などの予約システムもDjangoで作ることができます。
- 空いている時間の管理
- 予約の重複防止
- キャンセル処理
- お客様への自動メール送信
上記のような予約システムに必要な機能をすべて実装可能です。
カレンダー表示で空き状況を確認したり、オンライン決済と連携したりすることも簡単にできます。
また、予約状況の分析機能を使って、ビジネスの改善に役立てることもできるでしょう。
地図・位置情報アプリ
Djangoには、「GeoDjango」という地図機能があり、位置情報を使ったアプリを作ることができます。
例えば、近くのお店を探すアプリや、配達ルートを最適化するシステムなどが作れます。
Google Mapsなどの地図サービスと連携して、お店の場所を表示したり、目的地までのルートを案内したりする機能も実装できます。
不動産検索サイトや観光ガイドアプリなど、位置情報が重要なサービスでDjangoの地図機能が威力を発揮するでしょう。
Djangoで作られたサイトの例
Djangoの実力を最もわかりやすく示すのが、私たちが日常的に使っている有名サービスの数々です。
多くの人が一度は使ったことがあるであろう世界的なWebサイトが、実はDjangoで動いています。
ここでは、Djangoで作られたサイトの例をいくつか紹介していきます。
Instagramは、現在でもDjangoで動いている世界最大級のSNSの一つです。
20億人以上の人が使っているにも関わらず、今でもDjangoを中心とした技術で運営されています。
毎日何億枚もの写真が投稿され、いいねやコメントなどの膨大なやり取りが行われていますが、Djangoがこれらすべてを安定して処理しています。
Instagramが証明しているように、Djangoは世界規模のサービスにも対応できる、非常に優秀なフレームワークなのです。
Pinterestは、気に入った画像を「ピン」として保存・整理できるサービスです。
約2億5000万人の人が利用しており、料理レシピやインテリア、ファッションなど、様々な分野の画像が毎日大量に投稿されています。
Pinterestでは、DjangoとPythonを組み合わせて、大量の画像データを効率的に処理しています。
ユーザーの好みに合わせた画像の推薦機能や、ボード(画像をまとめる機能)の管理なども、すべてDjangoで実現されています。
Spotify
Spotifyは、音楽を聴くことを革命的に変えたサービスです。
現在4億人以上の人が利用している世界最大の音楽ストリーミングサービスで、Djangoが重要な役割を担っています。
ユーザーの音楽の好みを分析して、おすすめの楽曲を提案する機能や、プレイリストの管理機能などにDjangoが使われています。
Spotifyの開発チームは、「高速な処理と機械学習機能を活用するためにDjangoを選んだ」と説明しており、音楽業界にも大いに役立つフレームワークであることを証明した形になりました。
Mozilla
Mozillaは、Firefox ブラウザで有名な会社です。
1998年から存在する老舗のインターネット企業で、現在5億人以上の人がMozilla製品を使用しています。
そんなMozillaは、Djangoを使って、開発者向けの技術情報サイト(MDN Web Docs)やサポートサイトを運営しています。
プログラミングを学ぶ人なら一度は見たことがあるかもしれない技術情報サイトが、実はDjangoで作られているのです。
大量の技術文書を効率的に管理・更新するのに、Djangoの機能が活用されています。
初期の頃のYouTube
現在は世界最大の動画サイトとなったYouTubeですが、実は初期の頃はPythonとDjangoで作られていました。
当時のYouTubeは急激に成長していましたが、Djangoがその成長を支える安定したプラットフォームを提供していたのです。
現在のYouTubeは様々な技術を組み合わせた複雑なシステムになっていますが、初期段階でDjangoを使ったことで、迅速にサービスを立ち上げることができました。
この成功事例は、多くのスタートアップ企業がDjangoを選ぶ理由の一つになっています。
Djangoをインストールする方法
Djangoのインストールはとても簡単で、初心者でも数分で完了します。
2025年6月現在、最新版はDjango 5.2.3で、Python 3.10以上があれば使用できます。
まず、パソコンにPythonがインストールされていることを確認しましょう。
次に、以下の手順でDjangoをインストールします。
ステップ1:専用フォルダの作成
# Djangoプロジェクト専用の環境を作成
python -m venv my_django_project
ステップ2:環境の有効化
# Windows の場合
my_django_project\Scripts\activate
# Mac/Linux の場合
source my_django_project/bin/activate
ステップ3:Djangoのインストール
# 最新のDjangoをインストール
pip install Django
# インストール確認
python -m django --version
インストールが完了したら、django-admin startproject mysite
コマンドで新しいプロジェクトを作成し、python manage.py runserver
でWebサイトを動かすことができます。
まとめ
Djangoは、Python言語で作られた優秀なフレームワークです。
InstagramやPinterest、Spotifyなどの世界的な成功事例が示すとおり、個人の小さなプロジェクトから数億人が使う大規模サービスまで、あらゆる規模のWebサイト作りに対応できます。
覚えることは多いですが、一度習得すれば非常に効率的にWebサイトを作ることができるようになりますので、Pythonを学習する際は、併せてDjangoも学んでおくとよいでしょう。