かつてWebサイトに動きをつける技術の代名詞だった、JavaScriptのライブラリであるjQuery。
しかし、近年「jQueryは終わった」「もう古い」という声を頻繁に耳にするようになりました。
なぜ、あれほどまでに一世を風靡した技術が「終わった」と言われてしまうのでしょうか。
そこでこの記事では、jQueryが終わったと言われる理由や、jQueryが持つメリット・デメリット、今後のWeb開発・制作で学ぶべきモダンな技術について詳しく解説していきます。
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jQueryが終わったと言われる理由
jQueryが「終わった」と評価される背景には、技術の進化と開発環境の変化があります。
ここでは、その主な理由を4つの観点から具体的に掘り下げていきます。
モダンなフレームワークが登場したから
jQueryが終わったと言われる最大の理由は、ReactやVue.jsといったモダンなJavaScriptフレームワークが主流になったからです。
これらのフレームワークは、「コンポーネントベース開発」という考え方を採用しています。
これは、UIを独立した部品(コンポーネント)の組み合わせとして構築する手法であり、再利用性が高く、大規模で複雑なアプリケーションの開発・保守を容易にします。
また、これらのフレームワークは「仮想DOM(Virtual DOM)」という仕組みを持っている点もjQueryとの大きな違いです。
jQueryが実際のWebページ(DOM)を直接操作するのに対し、仮想DOMはメモリ上に軽量なDOMのコピーを持ち、変更箇所を効率的に計算してから実際のDOMに最小限の変更を反映させます。
これにより、UIの更新パフォーマンスが大幅に向上するのです。
こうしたパフォーマンスと保守性に優れたモダンなフレームワークが選ばれるのは、自然な流れと言えるでしょう。
新規のWeb開発でjQueryが用いられることはほとんどないから
世界の開発者が利用する技術トレンドを示す調査からも、jQueryの利用が減少していることは明らかです。
例えば、開発者向けの巨大コミュニティ「Stack Overflow」が2023年に実施した調査結果を見てみましょう。
「Webフレームワークと技術」の項目で、jQueryは長年使われ続けてきた実績から利用率では上位に位置しています。
しかし、これはあくまで過去に作られた膨大な数のWebサイトで使われていることを示しているに過ぎません。
テクノロジー | 利用率 |
Node.js | 42.65% |
React | 40.58% |
jQuery | 21.98% |
Express | 19.1% |
Angular | 17.59% |
Vue.js | 17.07% |
出典: Stack Overflow Developer Survey 2023
重要なのは、これが新規開発の現場で積極的に選ばれているわけではないという点です。
多くの企業や開発チームは、これから作るWebサービスやアプリケーションにjQueryを選択することはほとんどありません。
プロジェクトの求人情報を見ても、ReactやVue.jsといったモダンなフレームワークのスキルが求められるケースが圧倒的に多く、jQueryのスキルを必須とする新規開発案件は極めて少なくなっています。
この現状が「jQueryは終わった」という印象を強くしているのです。
Microsoftの「Internet Explorer」が終了したから
jQueryが絶大な支持を得た大きな理由の一つに、ブラウザ間の挙動の違いを吸収してくれるという点がありました。
特に、かつて多くの開発者を悩ませたのがMicrosoftの「Internet Explorer(IE)」の存在です。
IEは、他のブラウザと異なる独自の仕様が多く、同じJavaScriptのコードを書いても正常に動作しないことが頻繁にありました。
しかしjQueryを使えば、そうしたブラウザ間の差異を意識することなく、統一された記述でDOM操作やイベント処理を実装できたのです。
ところが、そのIEは2022年6月16日をもってサポートが完全に終了しました。
現在、Google Chromeなどの主流のブラウザは、W3C(World Wide Web Consortium)が定めるWeb標準への準拠が進んでおり、ブラウザ間の挙動の差はかつてほど大きくありません。
したがって、jQueryが担っていた最も重要な役割の一つがなくなり、その存在価値が相対的に低下したことも、「終わった」と言われる一因でしょう。
終わったと言われるjQueryを利用するメリット・デメリット
「終わった」という声がある一方で、jQueryは今でも多くのWebサイトで稼働しています。
そんなjQueryを今あえて利用することに、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
両方の側面について冷静に見ていきましょう。
jQueryを利用するメリット
jQueryには、その手軽さと長い歴史に裏打ちされた利点が存在します。
まず最大のメリットは、学習コストが低いことです。
覚えるべき概念が少なく、直感的にDOMを操作できるため、プログラミング初学者でも比較的容易にリッチなUIを実装できます。
HTMLとCSSの知識があれば、すぐにでもWebページにアニメーションやインタラクションを追加できるでしょう。
また、豊富なプラグインの存在も大きな魅力です。
スライダーやモーダルウィンドウ、カレンダーといった複雑な機能を、プラグインを導入するだけで簡単に実装できます。
さらに、WordPressをはじめとする多くのCMSで、既存のテーマやプラグインがjQueryに依存しているケースが少なくありません。
こうした既存システムの改修やメンテナンスを行う際には、jQueryの知識が依然として必要不可欠です。
新規開発での採用は減りましたが、保守案件においてはまだまだ現役の技術だと言えます。
jQueryを利用するデメリット
jQueryのデメリットは、モダンな開発手法と比較した際に顕著になります。
最も大きな問題点は、コードが複雑化・属人化しやすいことです。
jQueryのコードは手続き的に記述されるため、処理が長くなるほどコードの見通しが悪くなり、どこで何をしているのかを把握するのが難しくなります。
「スパゲッティコード」と呼ばれる状態に陥りやすく、機能の追加や修正、デバッグに多くの時間を要してしまうことがあるのです。
次に、パフォーマンスの問題も挙げられます。
前述の通り、jQueryは実際のDOMを直接操作するため、頻繁にUIを更新するような複雑なアプリケーションでは、仮想DOMを持つモダンフレームワークに比べてパフォーマンスが劣る傾向にあります。
これが、ユーザー体験を損なう原因にもなりかねません。
そして、現代の開発においてReactやVue.jsといったフレームワークとの相性が良くない点も大きなデメリットです。
これらのフレームワークは独自のDOM管理機構を持っているため、jQueryで直接DOMを操作すると、予期せぬ不具合を引き起こす可能性があります。
モダンな技術スタックの中にjQueryを組み込むことは、特別な理由がない限り避けるべきでしょう。
Web開発をやりたい人にとっては「jQueryは終わった」と言える
もし自分のキャリア目標が、複雑な機能を持つWebアプリケーションやサービスの開発に携わる「Web開発者」であるならば、残念ながらjQueryは「終わった」技術と言わざるを得ません。
現代のWebアプリケーション開発の現場では、状態管理、コンポーネントの再利用性、そしてチームでの開発効率が極めて重要視されます。
これらの要求に応えるのは、jQueryではなくReactやVue.jsといったモダンフレームワークの役割です。
求人市場を見てもその事実は明らかで、Webアプリケーション開発者の募集要項でjQueryが必須スキルとして挙げられることは稀です。
むしろ、React、Vue.js、Next.js、Nuxtといったフレームワークの経験が求められることがほとんどでしょう。
これからWeb開発者としてキャリアを築いていきたいのであれば、jQueryの学習に時間を費やすよりも、一日でも早くモダンなフレームワークの習得を始めるべきです。
jQueryの知識は、あくまで過去の遺産をメンテナンスするためのスキルと捉え、メインの武器として考えるのは避けるのが賢明な判断と言えます。
Web制作を目指す初心者にとってはまだjQueryは終わっていない
一方で、LPやコーポレートサイトなど、比較的動きの少ないWebサイトを制作する「Web制作者」である場合、jQueryは「まだ終わっていない」どころか、有効な選択肢の一つです。
特に、プログラミング学習を始めたばかりの初心者にとっては、jQueryはJavaScriptの世界への入り口として非常に優れた教材となり得ます。
HTMLとCSSを学んだ次に、「Webサイトに少し動きをつけたい」と考えた時、モダンフレームワークが必要とする環境構築(Node.jsやビルドツールなど)はハードルが高いと感じるかもしれません。
その点、jQueryはHTMLファイルに1行追加するだけで使い始められる手軽さがあります。
アコーディオンやタブ、スムーススクロールといったWeb制作で頻出するUIを簡単に実装できるため、学習の早い段階で「作る楽しさ」を実感できるでしょう。
脱jQuery後に学ぶべきフレームワーク
jQueryからのステップアップを考える際、次に何を学ぶべきか迷うかもしれません。
ここでは、2025年現在のトレンドを踏まえ、目的別におすすめのフレームワークを3つ紹介します。
React
Reactは、Meta社(旧Facebook)が開発したUIライブラリで、現在世界で最も人気と需要がある技術の一つです。
コンポーネントベースの考え方を徹底しており、大規模で複雑なWebアプリケーションの構築に非常に優れています。
豊富なエコシステム(関連ライブラリやツール)を持ち、Web開発だけでなくスマートフォンアプリ開発(React Native)にも応用できる点が大きな強みです。
求人数も圧倒的に多く、Web開発者としてキャリアを築きたいのであれば、学んでおいて間違いない選択肢と言えるでしょう。
Next.jsというフレームワークと組み合わせることで、SEOに強いWebサイトや高機能なWebアプリケーションも効率的に開発できます。
学習コストは、後述のVue.jsよりは高い傾向にありますが、それに見合うだけの大きなリターンが期待できます。
Vue.js
Vue.jsは、元Googleのエンジニアによって開発されたフレームワークで、シンプルさと学習のしやすさが大きな特徴です。
公式ドキュメントが非常に丁寧で、日本語の情報も豊富なため、プログラミング初学者やjQueryからの移行者にとって、取り組みやすい選択肢となるでしょう。
HTMLに近いテンプレート構文で記述できるため、jQueryで培った知識を活かしやすい側面もあります。
Reactと同様にコンポーネントベースで開発を進められ、小規模なサイトへの導入から大規模なアプリケーション開発まで、柔軟に対応できる拡張性も魅力です。
日本国内でも人気が高く、多くの企業で採用実績があります。
Reactほどの圧倒的な求人数ではありませんが、Web開発者を目指す上で非常に有力なスキルです。
Alpine.js
Alpine.jsは、「jQueryの現代版」「Tailwind CSSのJavaScript版」とも呼ばれる軽量なフレームワークです。
その最大の特徴は、jQueryのような手軽さで、宣言的な(HTMLに直接指示を書く)振る舞いを実装できる点にあります。
ビルドツールなどの複雑な環境構築は不要で、HTMLファイルにscriptタグを一行追加するだけで利用を開始できます。
「クリックしたらメニューを開閉する」「タブを切り替える」といった、jQueryが得意としていたシンプルなUIの実装に特化しており、まさに「脱jQuery」の直接的な移行先として最適です。
ReactやVue.jsほど多機能ではありませんが、LPや静的なコーポレートサイトに少しだけインタラクティブな要素を加えたい、というニーズには完璧に応えてくれるでしょう。
まとめ
以上、jQueryは終わったと言われる理由や、代わりに学ぶべきモダンなフレームワークなどについて解説してきました。
jQueryが終わったかどうかは、目指す方向性によって変わります。
Web制作をメインにするのならばまだまだ有用なスキルであるものの、Web開発をしたいのであれば終わったスキルだと言えます。
自分のやりたいことに合わせて、jQueryを学ぶかどうかを判断するようにしてください。