Googleが開発したGo言語は、シンプルで高速な処理が特徴のプログラミング言語として注目を集めています。
しかし、まだ比較的新しい言語ということもあり、「具体的にGo言語で何ができるのか」「どんなアプリやサービスが作られているのか」ということについてあまり詳しくわからないという方も多いでしょう。
そこでこの記事では、Go言語で何ができるのかについてや、実際にGo言語で作られたアプリやサービス、Go言語のメリット・デメリットなどについて詳細に解説していきます。
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Go言語とは
Go言語は、2009年にGoogleによって開発されたオープンソースのプログラミング言語です。
正式名称は「Go」ですが、検索時の誤認を避けるため「Go言語」や「Golang」という呼び方が一般的になっています。
Go言語の開発には、C言語を設計したケン・トンプソン氏や、UNIXを開発したロブ・パイク氏など、世界的に有名なエンジニアが携わりました。
Go言語の最大の特徴は「シンプルで信頼性が高く、効率的なソフトウェアを簡単に構築できる」という点です。
C言語の伝統を受け継ぎながら、より高速でシンプルなプログラミングを実現しています。
当初はLinuxとmacOSのみのサポートでしたが、現在ではWindows、Android、iOSなど様々なOSに対応し、大規模システムでも生産性を維持できる言語として注目を集めています。
Go言語でできること6選
Go言語は汎用性が高く、様々な分野の開発に活用されています。
ここでは、Go言語が特に威力を発揮する6つの開発領域について、具体的に解説していきます。
Webアプリ開発
Go言語の最も一般的な用途は、Webアプリケーション開発です。
高速処理と並行処理の能力により、膨大なデータを扱う大規模サービスの開発に適しています。
net/httpパッケージを使えば、他の言語では必須となるWebサーバーソフトなしで簡単にサーバー構築ができるのも大きなメリットでしょう。
実際に、YouTubeやメルカリ、ぐるなび、クックパッドなど、数百万人規模のユーザーを抱えるサービスがGo言語で開発されています。
これらのサービスは膨大なトラフィックを処理する必要がありますが、Go言語の処理速度の速さとメモリ効率の良さにより、安定した運用が実現されています。
スマホアプリ開発
Go言語には、「Go mobile」や「Go Cloud」といったスマートフォンアプリ開発用の制作ツールが標準装備されています。
これらのツールを使用することで、AndroidとiOSの両方に対応したアプリケーションを効率的に開発できます。
マルチプラットフォーム対応の特性により、一つのコードで複数のOSに対応できるため、開発工数の大幅な削減が可能です。
特筆すべきは、Web用とアプリケーション用でコードを書き換える必要がないという点です。
これにより、Webサービスとモバイルアプリを同時に開発する際の効率が飛躍的に向上します。
ドローン開発
Go言語は「Gobot」と呼ばれるロボティクス・IoT用のフレームワークを通じて、ドローン開発にも活用されています。
Gobotは35種類以上のプラットフォームに対応しており、様々なハードウェアデバイスとの連携が可能です。
基本的な飛行制御はもちろん、カメラ操作や動画撮影、バックフリップなどの複雑な動作もプログラムで制御できます。
ドローンの制御には高速な処理と安定性が求められますが、Go言語の並行処理能力により、複数のセンサーからのデータを同時に処理し、リアルタイムで機体を制御することが可能です。
また、ネットワークを介した遠隔操作機能の実装も容易で、産業用ドローンの開発にも適しています。
IoT開発
IoT開発は、身の回りの様々な機器をインターネットに接続して便利にする技術です。
Go言語は、これらのIoT機器のプログラム開発に適しており、限られたメモリや処理能力でも効率的に動作するのが特徴です。
前述した「Gobot」というフレームワークを使えば、温度センサーやLEDライト、モーターなど様々な部品を簡単に制御できます。
例えば、部屋の温度が高くなったら自動でエアコンをつけるシステムや、植物の土が乾いたら自動で水やりをする装置などを作ることができます。
CLIツールの作成
CLIツールとは、マウスを使わずにキーボードだけで操作するプログラムのことです。
黒い画面(ターミナル)にコマンドを入力して使うツールで、ファイルの一括処理や定期的な作業の自動化などに便利です。
Go言語で作ったCLIツールは、WindowsでもMacでもLinuxでも同じように動作させることができるため、どんな環境でも使えるツールを簡単に作れます。
実は、多くの有名なツールがGo言語で作られています。
例えば、Dockerという仮想環境を管理するツールや、Kubernetesというシステム管理ツールもGo言語製です。
身近な例では、大量のファイル名を一括で変更するツールや、CSVファイルを別の形式に変換するツール、定期的にバックアップを取るツールなどが作れます。
API開発
APIとは、異なるソフトウェア同士がデータをやり取りするための仕組みです。
例えば、天気予報アプリがYahoo!天気からデータを取得したり、X(旧Twitter)アプリがXのサーバーと通信したりする際に使われています。
Go言語は、このようなAPIサーバーの開発に非常に適しており、高速で安定したサービスを作ることができます。
Go言語で作ったAPIサーバーの特徴は、同時に多くのユーザーからのリクエストを処理できることで、膨大な人数が同時にアクセスしても、それぞれのリクエストを素早く処理して返答できます。
また、必要なメモリが少ないため、サーバーの運用コストを抑えることができます。
起動も速いので、サービスの更新やメンテナンスも短時間で完了します。
Go言語で作られたアプリやサービスの具体例
Go言語は世界中の有名企業で採用されており、私たちが日常的に使っているサービスの多くがGo言語で開発されています。
ここでは、Go言語の実力を証明する代表的なサービスを3つ紹介します。
メルカリ
日本最大級のフリマアプリ「メルカリ」は、バックエンドシステムの多くをGo言語で開発しています。
月間2,000万人以上のアクティブユーザーと、1日あたり数百万件の取引を処理する必要があるメルカリにとって、Go言語の高速処理能力は不可欠です。
特に、商品検索や決済処理など、レスポンス速度が重要な機能でGo言語が活用されています。
現在メルカリでは、AI機能の強化や国際展開を進めていますが、これらの新機能の基盤にもGo言語が採用されています。
大量の画像データの処理や、リアルタイムレコメンデーション機能など、計算負荷の高い処理でもGo言語の並行処理機能が威力を発揮しています。
メルカリの成功は、Go言語が大規模サービスの開発に適していることを証明する好例となっています。
Dropbox
クラウドストレージサービスの先駆者であるDropboxも、インフラ構築の重要な部分でGo言語を採用しています。
数億人のユーザーが保存する膨大なファイルを効率的に管理するため、Go言語の高速処理とメモリ効率の良さが活用されているのです。
特に、ファイル同期システムやキャッシュ管理システムなど、パフォーマンスが重要な部分でGo言語が使用されています。
Dropboxでは、当初Python中心の開発を行っていましたが、拡張性の課題に直面し、一部をGo言語に移行しました。
その結果、処理速度が大幅に向上し、サーバーコストの削減にも成功しています。
YouTubeなどのGoogle関連のサービス
Go言語の開発元であるGoogle自身も、多くのサービスでGo言語を活用しています。
特にYouTubeでは、動画配信のバックエンドシステムや、リアルタイムでの視聴データ処理などでGo言語が使用されています。
毎分500時間以上の動画がアップロードされ、月間20億人以上のユーザーが利用するYouTubeにとって、Go言語の並行処理能力は欠かせません。
Google CloudやGoogle App Engineなどのクラウドサービスでも、Go言語は重要な役割を果たしています。
Googleという巨大企業が自社サービスで積極的にGo言語を採用していることは、その実用性と将来性を示す最も説得力のある証拠といえるでしょう。
Go言語のメリット
Go言語が多くの企業に採用される理由は、その優れた特徴にあります。
ここでは、Go言語を選ぶべき4つの主要なメリットを詳しく解説します。
シンプルなコード記述が可能
Go言語の最大のメリットは、コードのシンプルさと可読性の高さです。
言語仕様が意図的に最小限に抑えられており、複雑な機能を排除することで、誰が書いても似たようなコードになるよう設計されています。
例えば、繰り返し処理にはfor文のみを使用し、while文やdo-while文は存在しません。
このような制約により、コードの統一性が保たれ、チーム開発での生産性が向上します。
変数宣言においても、型推論機能により型の明示的な宣言を省略できるため、静的型付け言語でありながら動的型付け言語のような簡潔な記述が可能です。
また、未使用の変数やインポートをコンパイルエラーとすることで、クリーンなコードの維持を強制しています。
これらの特徴により、保守性の高いコードを自然に書けるようになります。
処理速度が速い
Go言語はコンパイル型言語として、非常に高速な処理速度を実現しています。
PythonやRubyなどのインタープリタ型言語と比較すると、数倍から数十倍の速度差があることも珍しくありません。
また、JavaやC#のような仮想マシンを介する言語とは異なり、直接機械語にコンパイルされるため、起動時間も短く、メモリ使用量も少なくて済みます。
コンパイル速度自体も非常に高速で、大規模なプロジェクトでも数秒でビルドが完了します。
これにより、開発サイクルが短縮され、試行錯誤を繰り返しやすい環境が実現されています。
メモリ安全性が高い
メモリ安全性とは、プログラムがコンピュータのメモリを正しく使えることを意味します。
多くのプログラミング言語では、使い終わったメモリを手動で解放する必要がありますが、Go言語は「ガベージコレクション」という機能により、不要になったメモリを自動的に片付けてくれます。
これは、部屋の掃除を自動でやってくれるロボットのようなもので、プログラマーはメモリの管理を気にせず開発に集中できます。
Go言語は、よくあるプログラムのエラーも防いでくれます。
例えば、10個しかない配列の11番目にアクセスしようとすると、自動的にエラーを検出して教えてくれます。
また、存在しないデータを参照しようとした時も、プログラムが突然止まることなく、適切に処理できるようになっています。
これにより、バグの少ない安全なプログラムを作ることができます。
並行処理・並列処理に強い
並行処理・並列処理とは、複数の作業を同時に進めることです。
例えば、レストランで複数の料理人が同時に違う料理を作るように、プログラムでも複数の処理を同時に実行できます。
Go言語は「goroutine(ゴルーチン)」という仕組みを使って、この並行処理を簡単に実現できるのが大きな特徴です。
通常、並行処理のプログラムを作るのは非常に難しいのですが、Go言語では「go」という単語を付けるだけで並行処理ができます。
例として、画像のダウンロードを10個同時に行いたい場合、各ダウンロード処理の前に「go」を付けるだけで実現できます。
また、「channel(チャネル)」という仕組みを使えば、並行で動いている処理同士で安全にデータをやり取りできます。
これらの機能により、Go言語で作ったWebサーバーは同時に何万人ものアクセスを処理できます。
Go言語のデメリット
どんなプログラミング言語にも一長一短があり、Go言語も例外ではありません。
ここでは、Go言語を学習・採用する前に知っておくべき4つの注意点を解説します。
継承ができない
Go言語は、オブジェクト指向プログラミングの中核的な機能である継承をサポートしていません。
代わりに、構造体の埋め込み(embedding)とインターフェースによる多態性を提供しています。
この設計は「継承よりもコンポジション」という原則に基づいており、より柔軟で保守しやすいコードを書けるという利点があります。
しかし、JavaやC++などの言語に慣れた開発者にとっては、最初は戸惑うことがあるでしょう。
クラス階層を使った設計パターンをそのまま適用できないため、Go言語特有の設計手法を学ぶ必要があります。
例外処理がない
プログラミングでは、エラーが発生した時の処理方法が重要です。
多くの言語では「try-catch」という仕組みでエラーを処理しますが、Go言語にはこの機能がありません。
代わりに、関数が「正常な結果」と「エラー情報」の2つを同時に返す方式を採用しています。
例えば、ファイルを開く処理では「開いたファイル」と「エラー(もしあれば)」が返ってきます。
この方式では、エラーチェックのコードを毎回書く必要があるため、コードが長くなりがちです。
「エラーがあるかチェック→あれば処理」という記述が何度も登場し、最初は面倒に感じるかもしれません。
他の言語に慣れている人は、この書き方に違和感を覚えることもあるでしょう。
他の言語に比べて機能が少ない
Go言語は「シンプルであること」を重視して設計されているため、他のプログラミング言語にある便利な機能の一部がありません。
例えば、同じ名前で引数が違う関数を作る機能や、条件によって値を選ぶ短縮記法などがないため、最初は不便に感じることがあります。
Go言語は万能ではなく、得意な分野と不得意な分野がはっきりしています。
ただし、機能が少ないことは必ずしも悪いことではありません。
覚えることが少ないため学習が楽になり、チームで開発する時も全員が同じレベルで理解しやすくなります。
また、書き方が限定されることで、誰が書いても似たようなコードになり、他の人が読みやすいプログラムになります。
情報量が少ない
Go言語は2009年に登場した比較的新しい言語であるため、JavaやPythonなどの歴史ある言語と比較すると、日本語の情報源が限られています。
特に、高度な技術や最新機能に関する情報は英語のドキュメントに頼ることが多く、英語が苦手な開発者にとってはハードルとなることがあります。
書籍の数も他の主要言語と比べると少なく、特に初心者向けの体系的な学習教材が不足しています。
プログラミングスクールでも、Go言語専門のコースを提供しているところは限られており、独学での学習が中心となることが多いでしょう。
コミュニティも成長途上で、日本語での質問に対する回答が得られにくい場合があります。
ただし、公式ドキュメントは非常に充実しており、英語ではありますが質の高い情報が提供されています。
Go言語の将来性
Go言語の将来性は非常に高いと評価されています。
5Gの普及により、サーバーの処理速度が重視される傾向が強まり、従来のPHPなどの言語で構築されたWebサービスを、より速いGo言語にリプレイスする企業が増えています。
クラウドネイティブな開発環境の標準言語として定着しつつあり、特にコンテナ技術やマイクロサービスアーキテクチャの分野で重要な役割を果たしています。
Go言語を扱えるエンジニアは、2025年現在も平均年収ランキングで上位に位置しており、エンジニアの給与水準が非常に高い言語として知られています。
これは、需要の高さと、まだ供給(Go言語を扱えるエンジニア)が追いついていないことを示しています。
大手企業でのGoエンジニア採用も続いているため、エンジニアとしてのキャリアを考える上で、Go言語の習得は大きなアドバンテージとなるでしょう。
Go言語の学習方法
Go言語は比較的学習しやすい言語ですが、効率的に習得するには自分に合った学習方法を選ぶことが重要です。
ここでは、独学からスクールまで3つの学習アプローチを紹介します。
独学で学ぶ
Go言語を独学で学ぶ場合、まず公式サイトの「A Tour of Go」から始めることをおすすめします。
これは、ブラウザ上でGo言語を実行しながら基礎を学べる優れたチュートリアルです。
日本語版も用意されており、プログラミング初心者でも段階的に学習を進められ、基本的な文法から並行処理まで、Go言語の主要な機能を体系的に学べます。
書籍やオンライン学習サイトでの勉強も可能ですが、より実践的な学習としては、GitHubで公開されているオープンソースプロジェクトのコードを読むことも重要です。
実際のプロダクションコードを読むことで、ベストプラクティスや設計パターンを学べます。
プログラミングの独学は「挫折率約9割」と言われるほど非常に難しいですが、自己管理能力に自信のある方はチャレンジしてみるとよいでしょう。

メンターに伴走してもらう
メンターによる指導は、Go言語学習の効率を大幅に向上させます。
現役のGo言語エンジニアから直接指導を受けることで、実務で使える実践的なスキルを効率的に習得できるでしょう。
メンターから学ぶメリットは、疑問点をすぐに解決できることです。
独学では理解に時間がかかる並行処理やインターフェースの使い方なども、経験豊富なメンターの説明により短時間で理解できます。
また、コードレビューを受けることで、より良いコーディング習慣を身につけられます。
プログラミングスクールに通う
効率的にGo言語を習得するためには、プログラミングスクールを利用するという方法もあります。
しかし、現在Go言語を教えてくれるプログラミングスクールはほとんどない状況です。
Go言語の需要は増えているものの、まだ新しい言語ということで、教育体制が整っているスクールが少ないのです。
唯一Go言語をまともに教えてもらえるスクールは、「侍エンジニア」くらいでしょう。
侍エンジニアならば、オーダーメイドカリキュラムにより、Go言語の学習が可能です。
現役エンジニアによるマンツーマン指導が特徴で、個人のレベルや目標に合わせたカリキュラムを作成してもらえます。
その他、一応Go言語を扱っているスクールもありますが、あまりアテにはならないというのが筆者の正直な感想です。
まとめ
以上、Go言語でできることや、実際にGo言語で開発されたアプリ、メリット・デメリットなどについて解説してきました。
比較的新しい言語であることから、まだエンジニアの数も少ないですが、これまで解説してきた通りGo言語の将来はかなり明るいと言えます。
先を見越して、今からGo言語エンジニアを目指して動いておくのも良い選択肢かもしれません。